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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その6)
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が居る事だ」
「それは……」
「カストロプ公」
「カストロプ公……、財務尚書か……、しかし何故……」

「カストロプ公爵家もキュンメル男爵家とは親戚関係に有ったのだ。こういう場合、公爵でもあり、政府閣僚でもあるカストロプ公に後見を頼むのが普通だ。卿もローエングラム伯爵家を継承する身、良く覚えておくのだな。家と家の繋がりというのは厄介なのだ。もっとも卿を親族として認める人間がいるかどうか……」
「余計な御世話だ!」
フレーゲル男爵が笑い出した。顔には皮肉な笑みを浮かべている。嫌な奴だ、本当に嫌な奴だ。

「笑うのは止めろ! カストロプ公は」
フレーゲル男爵が手を上げて俺を止めた。
「そう怒るな、卿の言いたい事は分かる。カストロプ公は強欲な男だ。公に後見を頼めば、あっという間にキュンメル男爵家は無くなり、男爵は飢え死にしただろう。短い命が更に短くなるわけだ。先代のキュンメル男爵の判断は正しい。しかしカストロプ公が恥をかかされたのも事実だ、面白くは無かっただろうな」
「……」

なるほど、そういうものか。貴族というのは面倒なものだ。信頼されたければ信頼されるだけの人間になれば良い。それもせずに不満に思うとは……。
「マリーンドルフ伯爵はキュンメル男爵の頼みを引き受けた。しかし不安だったのだろう、どうすれば良いか友人であったヴェストパーレ男爵に相談した……」

「フレーゲル男爵、随分と詳しいが本当なのか」
「キュンメル男爵家に勤めていた人間に聞いた話だ。まず信じて良い」
気を悪くするかと思ったがそうでもなかった、詰らん。そう思ったらフレーゲル男爵がニヤリと笑った。俺の考えなど御見通しだと言いたいらしい、とことん馬が合わない。しかしこれでマリーンドルフ伯爵家とヴェストパーレ男爵家が繋がった。妙なところで繋がりが有る。

「相談を受けたヴェストパーレ男爵は自分の弁護士であったコンラート・ヴァレンシュタインをマリーンドルフ伯爵に紹介した。そして伯はコンラートをキュンメル男爵家の顧問弁護士にした」
「……では」
俺の言葉にフレーゲル男爵が頷いた。
「そうだ、マリーンドルフ伯爵家とヴァレンシュタインはキュンメル男爵家を通して繋がっていたのだ」

繋がりは分かった。しかし何度も思うがそれが今回の一件とどう繋がりが有るのかが分からない……。男爵がここまで話すという事は何らかの形でヴァレンシュタイン少佐が今回の一件に絡んでいるはずだ。しかしどうにも見えてこない。そう思っているとキルヒアイスが口を開いた。

「宜しいでしょうか……。そうなりますとコンラート・ヴァレンシュタインは相続問題を抱える二つの貴族の家の顧問弁護士をしていた事になります」
「その通りだな」
妙だな、フレーゲルが嬉しそうにキルヒアイスに答えている。


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