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101番目の舶ィ語
第八話。蜘蛛タンク
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……で、『蜘蛛』、『水飛沫』辺りで何か思い出したりしませんかね?」

「ちょっと待ってほしい。
……あっ!」

『蜘蛛』や『虫』ではなかったが、『赤い水』というものなら記憶にあった。

「蛇口から赤い水が流れたかと思うと、そこから蜘蛛が出てきたって噂があったよ。
『蜘蛛タンク』と呼ばれてたものだね。
去年に噂されたものだよ」

「なるほど。去年の噂で……なおかつ解決しているもの、と」

(解決しているもの?)

疑問に思い、一之江の視線の先に目を向けると______
屋上の上にはまだ新しい貯水タンクが設置されていた。
記憶によれば例の騒ぎの後に完全に古くなった貯水タンクを新品の貯水タンクに取り替えたらしい。
取り替えてからすぐにその噂は消えたようだ。
だからもう終わった噂だ!
そう告げようとした俺に一之江の呟きが聞こえてきた。

「解決し、消えた噂を再び利用する……正に『ロア喰い』の『魔術』ですね」

「え?」

一之江は呟いた瞬間、再び高く跳躍した。
その跳躍力は、普通の人間が跳べる距離の軽く三倍から四倍はある。
『ロア』の力を使っていない今でも、彼女にはこれくらい朝飯前な能力が備わっている、という事なんだろうか。
貯水タンクの上に片膝をついて着地した一之江は、そのままタンクに手を当てた。

「モンジ、一応見ておきなさい。これが……私のように『人間からロア』になったモノ、『ハーフロア』が使える力です」

「ハーフロアが使える力……」

一之江は触れた手を大きく振り上げ______

「えい」

チョップした。

______ブシャアアアアア??

一之江がチョップした箇所から真下に向けて、パックリと縦に裂けたタンクから大量の水が流れだした。

(新品の貯水タンクを手刀で一刀両断しただって??)

あまりの衝撃的な光景に呆然としていると______
タンクから流れた水が俺に降りかかってきた。

「ちょっ……ごぼごぼ」

俺と赤い水滴を流すかのように、水は屋上をあっという間に満たすと、そのまま階下に流れていった。
俺の体はフェンスにぶつかった事で止まったが、赤い雫は綺麗に流れていった。

「ごぼごぼ……ごほっ、げほっ、ごほっ!」

水を飲んでしまった俺は咳き込みながらも立ち上がり一之江の方に視線を向けた。

「長い間ロアとして過ごした人間は、このように他人の『ロアの世界』であろうと、一瞬だけなら力を発揮する事が出来るようになります」

「……これが、『ハーフロア』が持つ力なんだね」

「ええ。一部ですけど。
そして、『蜘蛛タンク』の噂は、よりちゃんとした水と入れ替える事によって消えました。
今回も『より大量の水』によって洗い流
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