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101番目の舶ィ語
第八話。蜘蛛タンク
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り、ざわざわと蠢いていた。さっきの小さな赤い蜘蛛が、大量に湧き出し、ぴょんぴょんと跳ねていたのだ。
俺の頭があった位置を掠めた物の正体はこの蜘蛛の一匹だったようで、その跳躍距離は人の頭を軽く超えるものだった。
蜘蛛というよりノミみたいな物だな、あれは。

(……一之江が引っ張ってくれなかったら俺はこの蜘蛛達に襲われていたな)

「助けてくれたんだね、ありがとう。
ところでこれは何だ?」

「不明です。ですが、この世のモノではないでしょう。
後、上を見たら殺します」

(上?)

一之江の言葉を無視して俺はついつい視線を上に向けてしまった。
視線の先には______

(ちょっ、な、なんで見えそうなスカートの中(絶対領域)がすぐ側にあるんだよ??)

上を見たらスカートが下から覗けてしまうくらい彼女との距離は近かった。

「見たら殺しますからね」

遠山金次(一文字疾風)
絶体絶命……って、ちょっと待て!
これは事故だ。
故意じゃない。
だから落ち着け。
止まれ、俺の血流)

だが、俺の思いとは裏腹に、血流の流れは加速し、それと同時にヒステリアモードが強化されていく。

「この世のモノじゃない、っていう事は、あの世のモノかもしくは……」

「ええ。もしくは『ロアの世界』のものです。いずれは貴方も作れますよ」

彼女(一之江)に言われて思い出したのは、あの誰もいなくなった街だった。
耳を澄ませば確かに、先ほどまで聞こえていた学校の喧騒がすっかり聞こえなくなっていた。

「それで、モンジ。この学園で、虫にまつわる何かの噂はありますか?」

「虫か……あったかな?」

一之江の質問に、俺はヒステリアモードの論理的に強化された思考力を使って記憶を呼び起こしていく。
虫にまつわる噂話。
それも場所的に屋上に関するものだろう。
一文字疾風の記憶の中を探っていると痺れを切らしたのか、一之江が呟いた。

「仕方ありません」

一之江は一度俺の方を振り向くと、そのまま予備動作なしでジャンプした。
バシャン!と、彼女が足を揃えて蜘蛛の上に着地すると、蜘蛛達は水飛沫のように飛び散って四方八方に跳ねた。
蜘蛛達は周囲に飛び散って……いや、よくよく見れば赤い水飛沫に変化していた。
さっきまでは小さいまでも8本の脚が確認出来たのに、今はごく普通の丸い雫になって床に飛び散っていた。
まるで蜘蛛が液状化、あるいは溶けたかのように……。

「どういう事だ?」

蜘蛛の水溜りがあった場所に立った一之江は、悠然とくるりと回転した。
その姿は鮮やかなダンスを踊っているようでもあり、思わず見とれるところだった。

「私のロアの方が強いから、噂が本来の姿を取り戻しただけです
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