コヨミフェイル
005
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にヘブライ語がわからないと言った戦場ヶ原に僕は矛盾を感じざるを得ないんだけど」
「いちいちうるさいわね、殺すわよ」
キレられた。
さっきまでおどおどしていたのが嘘のようだった。
僕を睨み付ける双眸には危なげな光が灯っていて、それは一時の戦場ヶ原を彷彿とさせた。いたぶるのは好きなのだろうが、いたぶられのは心底嫌なのだろう。自分がされて嫌であることを他人にするなと言うが、戦場ヶ原には関係ないことなのだろう。
「食べる気があるの?ないの?ないのならあのごみ箱に捨ててくるわ。三秒数えるから、決めるのね」
語気がどこか殺気をはらんでいた。
少しばかりいじめ過ぎたのかもしれない。
「さん……にい――」
「数えなくても、食べるよ。食べないわけがないだろう」
「なら四の五の言わずに食べなさいよ」
「ああ、わかった、わかった」
膝の上に置かれた弁当に今度こそ手を伸ばした。
弁当箱は丁寧に風呂敷に包まれていて、それを解くと、新品同然の、いや新品の弁当箱が出てきた。
一瞬驚くが、戦場ヶ原家が二人暮しで、さらに無駄な出費ができない家庭環境を鑑みるに驚くべきことではないと思うとともに僕のためだけに弁当箱を買わせてしまった罪悪感が抱いた。
「言ったでしょ、阿良々木くん。別に阿良々木くんのために作ったわけではないのだがらね。勿論弁当箱も既存のものを使ったのよ。だから、もし後ろめたい気分でいるのなら、それは見当違いもいいところだと、言っておくわ。それに、そんな気分のままで私の弁当を食べてほしくはないわ」
そんな僕の心中もお見通しの戦場ヶ原は僕の方を見ずに言った。戦場ヶ原の精一杯の気遣いなのだろうが、戦場ヶ原の言葉がありありと弁当が新品であることを物語っていた。
だけど、僕だって初めての戦場ヶ原の弁当をこんな気分では食べたくない。絶対においしく食べたい。
ならば、ここは割り切って食べるしかない。無理矢理だけど、そう自分を納得させて弁当の蓋を開けた。
「………………」
何故無言なのかというとそれは弁当の中身に起因している。
中身が普通だったのだ。
そう――普通だった。極めてありふれていた。
敢えて描写すると、四割おかずに六割ご飯で、おかずはミートボール一個、ソーセージ二本、ブロッコリー一本にきんぴら牛蒡少々だった。
正直に言って蓋を開けるまで僕は弁当箱の中身がどういう内容なのか少し不安だった。戦場ヶ原のことだから弁当が見るからに激辛だとわかる真っ赤な物体が詰め込まれているのではと思ったりもしていた。(実は空っぽなのではという考えもあったが太股にのせられた時点にその可能性は嬉しいことに消滅した)
「何よ」
無言で見つめていると、横合から不快感を隠そうともしない戦場ヶ原の声が聞こえた。
「普
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