コヨミフェイル
004
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なぜ手を挙げたのかという疑問を抱かなかったのは痛恨の極みだった。
「先生、その問題でしたら、阿良々木くんがぜひ解きたいと言っていました」
…………はああああああっ!
戦場ヶ原の口にした言葉を何度も反芻してから心の中で突っ込みを入れた。というよりか、声を張り上げた。
戦場ヶ原に向けられていた無数の視線が一斉に僕に向けられた。戦場ヶ原の方を見ると、すでに何事もなかった風にノートに目線を落として、シャーペンを走らせていた。
あいつっ!
失念していた。あいつは僕をいたぶることを生き甲斐、いや、生業としていることを。
だがしかし!今回は戦場ヶ原の思い通りにはならない。
「えっ?」
ハゲはほうけていた顔をさらにほうけさせた。まあ、当然と言えば、当然の反応である。戦場ヶ原に経緯を訊こうとしているようだが、戦場ヶ原は既に我関せずとばかりにシャーペンを走らせているので、困ったように僕の方を見た。
いや、見詰められても僕の方が困っているのだから、これ以上困らさないでくれ。
と、目で語ったのが功を奏したのか、ハゲは黒板に向き直って授業を再開するようだった。
よしっと、心の中でガッツポーズをするもつかの間、
「私からもお願いします」
と、羽川までもが手を挙げて僕を推薦した。羽川は戦場ヶ原とは違って僕のことを本当に考えての発言だろう。顔も語気も真剣みを帯びていた。
もしかして、これは僕の更正プログラムに組み込まれているのか?
更にもしかして、羽川と戦場ヶ原はグル?
…………有り得るけれど、さっきの羽川を見る限り、それはないだろう。
羽川は演技ができるような性格ではない。
今回を機に僕の更正プログラムに阿良々木を推薦することを組み込むつもりだとしたら?
そして、戦場ヶ原は羽川がそのように判断することを見越してしたのだとしたら?
戦場ヶ原なら考え兼ねない。十分にする可能性がある。
「そ、そうか。なら阿良々木くんに前で解いてもらうとしましょうか」
苦笑しながらハゲが戦場ヶ原と羽川に追従して書いていた解答を黒板消しで消しはじめた。
いじめのフレーズだった戦場ヶ原の言葉が、羽川という優等生がバックについたおかげで正当化されてしまった。となると、僕はいじめのように毎授業黒板の前に立たなければならないのではないか?
ならば、ここは戦場ヶ原ではないが、「わかりません」と言って辞退して二人にがっかりさせることでやる気を削ぐというのはどうだろうか。
多分戦場ヶ原に殺ろされるな。
戦場ヶ原があらゆる文房具を駆使して僕をいたぶっている様をそばでにこやかに羽川が見ているなんていう画が冗談ではなく本気で思い浮かぶ。
少なくともここで分かりませんと言ったら、間違いなく戦場ヶ原は僕と口を聞いてくれなくなる
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