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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり4
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 じゃあ、ナマケモノにしておくか――その言葉の代わりについたため息が目の前に広がる栗色の髪を揺らす。今朝方目覚めてから……いや、気を失っている間からか。がっちりとなのはに抱きつかれたままだった。例外はプレシアの病室に訪れていた間――その間なのはにはフェイトを迎えに行ってもらっていた――くらいなものか。俺の身体にしがみつくその姿はそれこそ木にしがみつくコアラか枝からぶら下がるナマケモノかといったところだ。雷が鳴っても離れそうにないその様子は、スッポンに例えてもいいかもしれない。……まったく、殺戮衝動の鎮静が上手くいっていなかったらどうする気だったのか。
(いや、それならどこにいても危険は同じか?)
 ともあれ、そろそろ離れてもらいたいところなのだが。心配をかけたことを加味しても移動のたびに抱き抱えて移動しなければならないのはいい加減面倒くさい。などと思っていると、
「ぐす……」
 鼻を鳴らすが聞こえた。ああ、せっかく泣きやんだと思ったらまた再燃したのか――などと思っていると、先手を打ってなのはが言った。
「だからこれは嬉し涙なの! 皆無事だったから!」
「……そうか」
 若干気圧されたのは否めない。逞しく育ってくれて一安心だ――取りあえず、それで自分を納得させておく。ともあれ、それならしばらく放っておくか。……まぁ、法衣を着たままだから多少鼻水がついても気にするようなことではない。
(それこそ、魔物由来の酸だの毒だのを浴びてもある程度は平気だしな)
 それらに比べれば鼻水なんて可愛いものだ。それに嬉し泣きなら好きなだけ泣かしてやる方がいいだろう。
 昨日の今日で艦の中はまだ慌ただしい様子だが、病室があるこの区画はその喧騒からもいくらか遠い。空調の音となのはの嗚咽だけがしばらく辺りを支配していた。
「ところで……」
 時間にすれば一〇分をいくらか過ぎたくらいか。ひとまず落ち着いた様子でなのはが顔を上げた。
「右目は何で治さないの?」
「ん? ああ……」
 右目――禁術の代償として捧げたそれはまだ修復していない。視界の狭さと距離感の曖昧さはあるが、普通に生活している分にはそこまで大きく気にはならない。……まぁ、慣れているという面もあるかもしれないが。記憶にはなくても『身体』が覚えている。
(身体が、っていうのも皮肉だけどな)
 この『器』――この『身体』になってからようやく二桁が過ぎた程度だ。その間に禁術を使った回数などまだ片手で足りる。だが、
「本来禁術の代償として捧げた部位は取り戻せないんだ。だから、最後の切り札になる」
「でも、その――身体は治ったでしょ?」
 皮膚と心臓の事だろう。まぁ、その辺りは治しておかないと深刻な負担となる。特に心臓は――いくら不死の怪物とはいえ、呪血の循環が滞ればその不死性……というより
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