魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり4
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問いかけると頷いた。
「魔物を仕留めると、多くの場合は元の姿に戻る。だが、それだけじゃあ不完全だ。そのまま放置すれば、力を取り戻し次第また魔物に戻る。当然そのまま死亡する事もあるが……例えその場合でも、魔物化した魂は復活してくる事がある。もちろん、再び魔物として。だから、魔法使いはそこで一つの選択をしなければならない。つまり、その元魔物の魂まで葬るか。それともその過ちを赦すか」
「それが生贄と救済、ですか?」
言ったのはユーノだった。心なし顔色が悪い。当然の反応だろうが。
「そうだ。救済はやって見せた通りだ。生贄は自らの右腕に魂を取り込み、封じ込める。グリムはこの選択を運に任せた――つまり、どちらが起こるかをその本人の運命に委ねる手法を生み出しただけで、魔物化した人間の末路はこの二つのどちらかしかない」
「生贄か救済。あるいは運命。その決断が、三組織の違いと考えていいのかしら?」
話が早くて助かる。ついでに言えば、その根底にある神話に触れなくて済むというのは非常に助かる。余計な事は言わないまま、説明を先に進められる。
「簡単に言えばその通りだ。もっとも、魔法使いも人の子だからな。必ずしもその限りって訳じゃあないが」
掟破りには粛清を――そんな指針が決まる程度にはアヴァロン所属の魔法使いも救済していた訳だ。恩師とて少なくない人数を救済していたはずである。……もっとも、それが俺が受け継いだ世界で下した選択だったのかは、今となっては確かめる術もないが。
「当時、最大勢力だったのはアヴァロンだった。……少なくとも、当時世界の覇権を握っていたロムルス帝国から公的に魔法結社として認められていたのは、その組織だけだった。結果として、アヴァロンは魔法使い……ひいてはセルト人の社会を統治していたとも言える。だから、魔法使いとして生きるならこの組織に所属するのは一般的だった。サンクチュアリやグリムの構成員の何割かも元々はアヴァロンに所属していたはずだ。だからまぁ、魔法使いの家系に生まれた恩師がアヴァロンに所属したのは別に不思議でもなんでもない。ごく当たり前の結果だ」
「つまり、その仕事中に件の『魔物』を取り込んだという事かしら?」
「いや、違う。そもそもこの場合『魔物』というは殺戮衝動に対する比喩にすぎない。原因は別……つまり、魔物化した魂を取り込んだからじゃあない」
考えてみれば、恩師はそういった代償には苦しめられていなかったように思える。殺戮衝動に紛れて分らなかっただけかも知れないが――あるいは彼女の『加護』があったのかもしれない。
「それなら何故?」
「アヴァロンに加入するためには、試験に合格しなければならない」
途端に、リンディが困惑したような表情を浮かべた。質問に対しての返答ではないと思われたのだろう。とはいえ、それも一瞬の事だ
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