魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり4
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えば――誰が見ても分かるような代償が残ってしまえば、やり直しも難しくなるのだ。とはいえ、それは周囲の環境次第でどうとでも変わる。……その環境を整えるために、リンディにはもう一働きしてもらう事に決めていた。もちろん、勝手にだが。
「ある一定の時点まで肉体の状態を巻き戻す。それがあの魔法の効果なのか? もしそうだとするなら、プレシア・テスタロッサは定期的に検査を受けた方がいいのか?」
言ったのはクロノだった。しかし、ずいぶんと味気のない表現である。救済というのは、そう単純なものでもないのだが。
「健診は受けておいて損はないだろうが……単純に巻き戻している訳じゃあない。さっきも言った通り、魔物化してしまった原因というのも癒えるからな。例えば……」
さて、誰を例に出すのが一番分かりやすいか。何人もの顔が浮かんでは消えて――
「そうだな。昔救済した中に、生まれつき身体の弱い男がいた。そいつは特に視力が弱くてな。生まれつきほとんど何も見えなかったらしい。で、そいつが青年になってから、甲斐甲斐しく世話をしてくれる女性と巡り合い、恋仲になった訳なんだが――」
実際のところ、魔物化する要因には概ね悲劇が付きまとう。まぁ、うっかりすると喜劇にも見えるようなものも稀に混ざっているが。
「恋人になったのに、どうしたの?」
先を促したのはなのはだった。正直失敗したと思う。まだウチの妹には少しばかり早い話だった。
「まぁ、ごく当たり前の欲望が沸き起こったのさ」
仕方がない。多少改ざんして話すとしよう。決めてから、口を開く。
「ごく当たり前の欲望?」
言ったのはフェイトだった。惚れた腫れたの話に食いついてくるあたり、やはり年頃の少女という事だろうか。
「何だと思う?」
少し好奇心が刺激され、思わずそう言っていた。
「えっと、手を繋ぎたいとか?」
「一緒にどこかへお出かけしたいとか?」
なのはもフェイトも実に可愛らしい答えを返してくれた。二人にはぜひ成長してもそのままでいて欲しいところだ。と、それはともかくとして。
「相手の姿を見たい、だよ。最初に言っただろ、目が見えないって」
そこまでは、ごく当たり前の事なのだ。さらに言えば、それ自体は聖杯を使わずとも叶いつつあった。それこそが、悲劇の始まりだったとしても。
「まぁ、それを思い詰めちまったんだろうな。結局、そいつは魔法に溺れ魔物化した」
本当の引き金となったのは、その女性の裏切りだった。容姿に自信のない彼女は、彼が目が見えるようになりつつある事を恐れ、思い詰めるあまり毒を盛った。命の限界を悟った男は、より強く彼女の姿を見たいと――せめて、最後にひと目見たいと思い詰め……命が尽きる直前に事実を知った。だが、彼を本当に絶望させたのは、おそらく彼女が毒を盛っていたという事実ではないだ
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