魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり4
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「ええ。今から考えて二六年前よ」
「当時の彼女の年齢も把握しているか?」
「もちろん」
「それを踏まえて、今のプレシア女史を見てくれ。何かピンと来るものはないか?」
もっとも、プレシア自身が相棒や桃子、リンディ並みに――下手をすればそれ以上に若作りなので、俺自身いまいち自信がないのだが――と、そんな事を思っていると、リンディはあっ、と小さく声を上げた。
「ひょっとして、その当時まで若返っているというの?」
「まぁ、それよりいくらか若いようにも思えるが……それが正解だろう。魔物化した人間を救済した場合、大体の場合転機となった時点の姿に戻る。ついでに言えば、原因となったもの――例えば障害や病も癒える事が多い。そうだな。例えば自分で切り取って料理して人に食わせちまった料理人の舌が回復した事例もあるくらいだ」
途端、コーヒーに口をつけていたクロノがむせ込んだ。他の連中にもなかなかの形相でこちらを見てくる。別にだからという訳でもないが、もう一言付け足しておく。
「それに若返りが起こったという事例も知っている」
もっとも彼女の場合、単純な若返りとも言い難いが。だが、あの薬師がどうしてそんな『体質』になったかを説明しようとすると聖杯について触れなければならない。それはいくらか都合が悪いし、今のところは本題からも外れる。
(とはいえ、そうそう過信できるものでもないが)
いずれにせよ、救済とて完璧ではない。プレシアを横目に見ながら、声にせず呟く。
救済によって魔物と化した肉体を戻す事が出来たとしても、その精神までは戻せない事も多い。だからこそ、救済したとしてもその半数は再び魔物化すると言われている。旧世界のアヴァロンですら把握していた以上、信頼性のある数値だと考えていいだろう。だからこそ、新旧問わずサンクチュアリは救済後に醜人――つまり、元魔物の人間相手の『人生相談』にも随分と力を入れていた。それでも堕ちる奴は堕ちるのだから、エレインの理想を叶えるのはなかなか難しいようだが。
ともあれ、プレシアが再び堕ちてしまわないようしばらく見守る――場合によっては、もう少しだけお節介を焼く必要はあるだろう。そのためにも傍にいてもらわなければ困る。とはいえ、それを管理局に告げる訳にはいかない。
話を聞く限り、管理局に魔物化に対処する術がないのは明白だが……それでも、再び魔物化する危険がある、なんて事を伝えた場合に連中がどんな判断を下すかは大体見当がつく。余計な横やりは誰のためにもならない。ここは黙っておくのが賢明だ。
「……何と言うか、凄いとしか言いようがないわね」
取りあえず気分を持ちなおしたらしいリンディが呻いた。
「そうか? 単純に人生をやり直せる最低限のところに逆戻りしただけだと思うがな」
それに。もっと深刻な代償が残ってしま
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