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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
磔刑は聖人を裁きし矛
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るのか?」
「まぁね。それが知り合いだというから余計に質が悪い。僕にとって妹みたいな存在だから、無下にできないのも調子に乗らせる要因になっているんだけど、ね」
どこか遠くを見据えるような視線で物思いに耽る店主。
彼の言動から、その少女を厄介者として扱いつつも大事にしているという思いが滲み出ている。
どこか優しい雰囲気が展開されている中、早苗の声が響く。
「シロウさん、これ着てみてください!」
そうして手渡されたものを見て、思わず目を見開いてしまう。
「………店主、試着室はあるか?」
「残念ながらない、が―――何なら僕の部屋を使ってくれて構わないよ」
「すまない、感謝する」
しかしその躊躇いを振り切り、店主の言葉に従い奥の部屋へ進む。
改めて早苗に渡された衣服を観察する。
………正直なところ、このチョイスに悪意を感じる。
間違いなく善意と感性に沿った結果なのだろうが、それでもこれは―――
「―――いや、やめておこう。考えるだけ馬鹿らしい」
彼女に一任することを望んだのは紛れもなく私自身。
ならばその結果を甘んじて受け入れることもまた、自業自得によるもの。
時が経てば経つほど躊躇いが加速するだろうし、とっとと済ませてしまおう。
「………どうだろうか?」
私の姿を見て店主はポカンとし、早苗は目を輝かせている。
今の格好は、赤のレザージャケットに黒のジーンズと、ここまでは普通。
―――しかし、ジャケットの方は微妙にサイズが合っていないのか、はたまたチャックは飾りという前提の構造なのか、チャックを締めようとしてもキツめの仕上がりになってしまう。
幸いにもチャックを締めなければ鎧は着用できるので、機能美を補うことはできた。
しかし、オプションとしてつけられた二つのベルト―――その内のひとつは間違いなく首輪サイズ―――を見た途端、早苗が私に何を求めているのかがわからなくなった。
軽めのメタルファッションのような着こなしに、私自身何と答えればいいのかがわからない。
「お似合いですよシロウさん!」
「………ありがとう」
早苗が純粋にそう思っているのが辛い。
このキラキラした目を濁らせるなんて、私には無理だ。
「あー、なんだ。………がんばれ」
私の真意を察した店主の言葉が染み渡る。
なんだろう、彼とは私と同じ匂いを感じてしまう。
「これ一式ください。お金は―――」
「なら、これぐらいで―――」
「あれ、安い―――」
「一種のサービス―――」
二人の会話がとても遠くに聞こえる。
帰りの道中は間違いなく奇異の目で見られ、帰宅すれば爆笑の渦に巻き込まれる光景が目の奥に浮かぶ。
………どうしてこうなってしまったんだ。
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