暁 〜小説投稿サイト〜
MA芸能事務所
偏に、彼に祝福を。
第二章
三話 かくれんぼ
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声もあったが、ただ目的も送り主の明記もされていないメールに対して警戒する声もあった。後は面倒だから参加しないとの声も。
 今、この事務所で未だに口を開かないのは三人。私、ちひろさん、そうして予め話をしていたゆかりさん。
 参加の声が聞こえ始めた頃、ゆかりさんもソファーの元へ来て、私の向かいの席へ腰を降ろした。
 そうしてゆっくりと、だけれど着実に時計は針を進め二十五分になった頃、私は口を開いた。
「参加、しましょう」
「ええ」
 二人して携帯を操作して、空メールを送り返す。そうしてしまえば、後はゲームの勝敗への緊張感が、私を満たした。
 十二時三十分、まだ次のメールは届かない。
 十二時三十五分。また事務所内の沢山の携帯が鳴り響いた。緊張により震える手で携帯を取り出し、メールを確認する。先ほどとは違うアドレスからだ。
『このメールの受信者が、このゲームの参加者だ。必要な連絡はこのアドレスから送る。 尚、先ほどのアドレスもこのアドレスも、これ以降返信したところで何も送り返さない。 では、現時刻十二時三十五分を持って、かくれんぼを開始する』
 文面を確認した私は立ち上がった。ゆかりさんも同様に立ち上がる。私達の戦いの火蓋が切られたのだから。
 まずはこのメールの宛先のアイドル達をリストアップした。何人もの名前が連なる。全体で凡そ三十名。幾つか知らないアドレスもあったが、この際それは考えなくていいだろう。
 その後、この事態をただ単なる遊びとは思っていない人、または行動力のある人間をピックアップしていく。
 自身の名前、水本ゆかり、クラリスの名前の横に丸をつける。そうして青木姉妹の横に三角、原田美世、向井拓海の横に四角を。……こちらの戦力は九人、そうして捜索範囲は日本全土。絶望的な戦い。
「ゆかりさん、美世さんと拓海さんに協力を仰ぐメールを。私は青木さん達に連絡を入れます」
「事の全容を伝えますか?」
 一瞬迷ったが、首を横に振った。
「私達がこのゲームを達也さんが起こす事を知っていた旨を話していただければ十分です。
私達が本気で見つけるつもりとも付け加えてください」
 分かりましたとの返事を受け取って、私も携帯を操作する。青木麗さんにまずは電話を。
「もしもし、麗さんですか?」
 一コール目もなり終わらぬ内に彼女は電話に出た。
「ああ。……かくれんぼのことか?」
「そうです。恐らくあなたが思っている通り、これは達也さんが計画したものです」
 私は、このゲームが行われるに至った経緯を掻い摘んで話した。
「しかし、何故また彼はこんなにも大多数の子たちに送ったんだ?」
 言われれば、確かにそうだ。私がそもそも青木姉妹に相談しなかった理由が其処にある。参加者はそもそも私と慶さん、そしてクラリスさんだけと思っていたのだ。
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