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青い春を生きる君たちへ
第7話 嫌いじゃないわ
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、小倉は唇を噛んだ。高田に見られていたのか。高田は見た目には可憐な美少女だが、たまに口を開けば、言いたい事はズバズバ言ってくる。


「……でも、勝俣くんにとっては、それはお節介だったみたいね」
「……それが分からねえんだよ。どう見たってタカられてるじゃねえか。何が虐められてるように見えちまった、だ……。誰がどう見たって虐められてるだろうが。虐められてないと思ってるの、奴だけだぞ」


小倉は首を傾げるしかない。小倉は、何で自分が怒鳴られなければならなかったのか、皆目分からなかった。俺のせいで虐められてるように見えてしまう?代金を肩代わりしてやって、どうしてそういう怒られ方をしなければならないのか。


「そうね。勝俣くんは週に3回程の頻度で、ああやって大古くん達に昼食を奢っているわ。大古くん達から勝俣くんに対して、何か見返りを与えているようには見えないし、そもそも彼らが昼食時以外に関わってるのを見た事がない。実態としては、金銭の搾取と言ってもいいかもしれない」「お前、案外人の事見てるんだな……そうだ、どう考えても巻き上げられてんだろ。それを何で今更……」
「小倉くん、あなた、絶対に変える事のできない状況の中で、それでも生きていかないといけないとしたら、どうする?」


高田のこの問いかけに、小倉はピクリと、体が震えた。絶対に変えることのできない状況、その中で生きていく……?小倉はその言葉を聞いた時に、甲洋での日々が真っ先に頭に浮かんできた。どうしようもない理不尽を前にして、自分が、自分たちがとってきた行動は?それを思い返すと、何とも言えない気分になってしまった。


「……状況が変えられないなら、自分を変えるしかない。そうでしょう?勝俣くんは、状況の解釈を変えたのよ。傷つかないように。……自分が虐げられていると、いいように利用されていると、認めるのは、辛いから」
「な……何だよそりゃぁ。あんなゴミ共に迫られただけだろ?それが何で、"変えられない状況"って事になるんだ。おかしいだろ……」
「あなたにとっては、大古くん達なんてゴミでしかないでしょうね。でも、勝俣くんにとっては、違うのよ。少なくとも、彼本人は、大古くん達には逆らえないと思ってる。自分自身でそう思ってる時点で、何か行動を起こす事もないから、状況が変わる可能性もかなり低いわね。結果的に、"絶対に変えられない状況"という結論が、正しいものになるわ。」
「…………」


小倉の中では、絶対に変えられない状況というのは、あの室内練習場で味わった絶望感……それに匹敵するものが想像される。それに比べて、あんな髪の長いヒョロヒョロな連中の威圧感など、実にショボい、問題にすらならないものとしか思えないのだが……それもあくまで「自分の中での」話で、自分と勝俣とは違うのだ
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