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MA芸能事務所
偏に、彼に祝福を。
第一章
七話 過労と計画
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達が貴方の異常性に気づく。いや、もう気づいているかもしれません。その時どうするんですか?」
「どうもこうもない。その時はその時だ。私がやめるか何かだろう」
 青木姉妹が絶句する。誰も何も言わなくなったからか、乾が口を開いた。
「俺は失礼する。お大事にな」
「待て!」
 出ていこうとした彼の肩を、麗が掴んだ。
「お前は何か知っているだろう?」
「あぁ? ……しょうがない俺はほんとのことを話すぞ? まず俺は、去年の秋に半年ぶりに達也に会った。それ以降定期的にさくら役として彼に雇われた。終わり」
「半年……今から一年前に何があった?」
 彼は私を眺めた。私は首を横に振った。
「一年前? それは俺の口から語ることじゃねえな」
 それじゃあなと最後に言って、彼は麗の手を振りほどき廊下に消えた。
 暫し無言の時が流れ、それを打ち破るように最初に口を開いたのは慶だった。
「達也さん」
 私の名を呼ぶ彼女は、微笑んでいた。彼女は私の手を取り、両手で包んだ。
「私は、達也さんを慕っています」
 面食らった。それは他の青木姉妹も同じようで、誰もが驚いた面持ちだ。
「達也さんが何を思ってこうなさっているかはわかりません。ですが、これは異常です。こんなことを貴方が続けても誰も幸せになれない。なら、私は、貴方を変えます。変えてみせます。例えそれが私のエゴであっても、貴方に嫌われることになっても」
 彼女は言い切りると、お大事にと告げて廊下へ消えた。他の三人は廊下と私を目で往復し、暫く声がでなかったが、次に口を開いたのは明だった。
「私も同じ気持ちです。慶と協力して、貴方を変えます」
 そうしてまた明も廊下に消えると、似たような言葉を繋いで聖も消えた。残るは麗と私。
「……お前と二人だと、いつぞやの慰安旅行を思い出すな」
 彼女の言わんとすることはすぐにわかった。榛名神社でのことだろう。
「案外、自信が必要なのはアイドルよりもお前なのかもな」
 そう言うと、麗も廊下に消えていった。
 私は、彼女たちの言葉を脳内で反芻してから、アイドル達からのバスケットに手を伸ばし、中の名札を裏返した。中にはびっしりと彼女たちの心配する言葉が。
 私は、ある計画を考えて実行をする決心を決めた。その時、脳裏に一瞬、ラヴェルのボレロが過ぎった。
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