暁 〜小説投稿サイト〜
MA芸能事務所
偏に、彼に祝福を。
第一章
四話 彼女たちの成功
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えられることがなかったんです。知識でドールハウスと躱しましたが、最近の物は分からないので突っ込んだ質問をされると辛いです。今日はされなかったので幸いでしたが」
「お前、ドールハウスは好きか?」
「最近やっていないので今でも好きかは……」
「じゃあ試せ。趣味位見つけてこい。それで見つかったら報告してくれ。趣味とまでいかなくても。自分が好きだと思った曲でも何でも、ノートにでも書いて置く。そうすれば好みで何か訊かれても困ることもなくなるだろう」
 とりあえずの指示はこれくらいでいいだろう。彼女がより自身を表現できるようになればその振る舞いに自信がつく。そうすればきっと今より歌が良くなるだろう。彼女は技術がある。それはトレーナーさん方も思っている。けどいまいち伸びが悪いのは自信がないからだ。
「わかりました。相談に乗ってくれて有り難うございます。……それで質問なのですけどプロデューサー」
 一旦彼女は切って、切り出しづらそうに続ける。
「プロデューサーのご趣味ってなんですか?」
 誰の指示だろう、何て思った私は酷く醜い生き物なのかもしれない。
「冗談でいい話か?」
「いいえ。……付け加えて言うならば、私は貴方の家での一件を聞いています」
 彼女としては強い物言い。
「水本からか。お前も一枚噛んでいるんだったな。……趣味か。わからない」
「では最後に聞いた曲は?」
「分からない」
「では、ぱっと思いつく曲一つ言って下さい」
 曲? リズムを一つ頭に浮かべるなら、最初に浮かぶ曲はアイドルの曲でも、流行の曲でもない。いつか微睡で聞いた曲。
「……ボレロ」
 一瞬岡崎の顔が歪んだのを、私は見逃さなかった。
「変わっていませんね」
「お前は変われたな」
「貴方のお蔭で。貴方が私に近かったから。そうして貴方が等身大の“私”を肯定してくれたから」
 そうかとだけ返す。
「ですから、プロデューサー。ありがとうございます。“私”はこれからもっと頑張れそうです」
「プロデューサーとして冥利に尽きるな」
「それで、提案なのですけれども、プロデューサーの事を名前でお呼びしても構いませんか?」
 一瞬、心的距離を僅かにだが詰めようとしてきたことに戸惑いを憶えるが、改めて考えれば今まで役職名で呼んできたことが異常と言えば異常なのだ。
「平間って具合にか?」
「いえ、達也さんと」
「……苗字では駄目か?」
 流石に本当に名前を言ってくるとは思っていなかった。アイドルとの距離として名前で呼び合うのはどうなのだろうか……。
「今までの感謝の念を込めてお名前でお呼びさせて頂きたいのですが」
 彼女がここまで自身の意見を述べる事も珍しい。ここは私が折れるべきか。
「……岡崎がここまで強くでるとはな。分かった。好きなように呼んでくれ」

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