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久し振り
第九章
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んの影響で野球はカープなんだよ」
「だからかよ」
「ああ、そうだよ」
 それが理由なのだという。
「それでだよ」
「それでか」
「だから野球はカープなんだよ」
 そしてまた言うのだった。
「阪神も好きだけれどな」
「まあ巨人じゃなかったらいいけれどな」
「そこまで言える位に変わったんだな」
 その彼の言葉である。俊が巨人じゃなかったら、という言葉に注目してである。
「つまりは」
「ああ、そうだけれどな」
「人間ってのは変わるんだよ」
 彼はまた言った。
「今だってそうだよな」
「わかった。そういうことか」
「わかったらあの娘のこともな」
「ああ、よくわかった」
 俊は今杏のことが完全にわかった。ようやくだった。
 そして今はだ。こう言えたのである。
「昔のあの娘も今のあの娘もな」
「同じあの娘なんだよ」
「そうか、何かな」
 感情が自然に沸き出てきた。ここまでの話で。
「俺、杏ちゃんとどんどん会いたくなってきたな」
「タイプだからか」
「まあな」
 照れ臭そうに笑っての言葉であった。しかしそれでも言うのだった。
「またな。会いたくなったな」
「じゃあどんどん会えばいいさ。仲も進展させてな」
「そうするよ。ゆっくりとな」
 そんな話をしたのだった。俊は自分の気持ちに素直になることにした。そしてそのうえでまた杏に会いに行くのであった。


久し振り   完


                 2009・12・20

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