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久し振り
第八章

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第八章

「感じが違うし」
「感じが違う」
「だって昔のお兄ちゃんって」
「俺は?」
「遊んでばかりだったから」
 こう言うのである。昔の彼について。
「だからね」
「それでなんだ」
「変わったのね」
 杏は今度はこう言ってみせてきた。
「お兄ちゃんって」
「俺そんなに変わったんだ」
 俊は今の言葉を聞いて思わず目を丸くさせた。
「そんなに」
「別人みたいよ」
「そうか、俺もだったんだ」
 彼女に言われてわかったことである。
「杏ちゃんだけでなく」
「私も?」
「いや、杏ちゃんもね」
 この前に会った時に言おうとしてそれでも言えなかったことをだ。今ここで言うのである。
「変わったよね」
「変わったかしら」
「うん、かなりね」
 こう告げるのである。
「何ていうかね」
「どう変わったの?」
「可愛くなったね」
 自分でも言葉を選ぼうとした。しかしこう言うしかなかった。
「それもかなり」
「えっ!?」
 杏は俊にこう言われると思わず顔を真っ赤にさせてしまった。
「可愛くなったって」
「うん、まあね」
 言ってしまったことはわかる。しかし訂正はしなかった。
「昔とは本当に別人で」
「そんなにかしら」
「可愛いよ。凄くね」
「自分では意識したことはないけれど」
 杏も自分ではそういう自覚はなかったのである。
「そうかしら」
「そうだよ。そうだね、変わったんだね」
 自分でも言うことになった。俊本人も意外だった。
「それは」
「お兄ちゃんも私も」
「それが今わかったよ」
 彼はまた言った。
「本当にね。だったら」
「だったら?」
「何か今日また会ったけれど」
 今度は言葉を少しずつ選んでいた。そうしてそのうえで杏に告げた。
「また会わない?」
「また?」
「そう、またここでね」
 会おうというのである。
「それはどうかな」
「うん、じゃあ」
 俊のその言葉に満面の明るい笑顔で応える杏だった。
「また今度ね」
「何かお互い本当に変わったんだね」
「そうね」
 二人でこのことをお互いに確かめ合う。
「それじゃあまたね」
「うん、またね」
 こう言い合ってまた会うことを約束した。そしてこのこともまた友人に話すのだった。今度は大学の食堂でだ。 
 二人共ハンバーグ定食を採っている。白いテーブルに座ってそれで向かい合っている。周りには私服の学生達があれこれ楽しく言い合いながら食べている。そんな明るい食堂だった。
 その食堂の中でだ。彼は友人に対して言うのだった。
「また会うことになったよ」
「またか」
「そう、またな」
 にこにことしながら話すのだった。

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