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久し振り
第五章

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第五章

「ちょっとな」
「ちょっとじゃないだろ」
「ああ、話に聞いていたのと全然違うな」
 本音を言ってみせた彼だった。
「何もかもな」
「男子三日会わざればっていうがな」
「女の子でもそうだけれどな」
「いや、それでもな」
 俊は言葉が少し荒くなっていた。必死気味である。
「あれはかなり」
「違うか」
「全く違うんだよ、昔の写真な」
「あるのか?」
「あるんだよ、ほら」
 言いながら懐からまずは財布を取り出してきた。
「これな」
「これがあの娘か」
「別人だろ」
 その写真を見せながらの言葉だった。
「これとな」
「髪ショートだったんだな」
 そこには幼い時の杏がいた。髪はショートでしかもかなり癖がある。顔も日焼けしていて真っ黒である。まるで男の子みたいな格好をしていてその手には虫取りの網まである。そんな姿で白い歯を見せて笑っている。
「それに」
「男の子にしか見えないだろ」
「っていうか男の子なんだろ?」
「だから杏ちゃんなんだよ」
 こう話す彼だった。
「あの娘なんだよ」
「本当に全然違うな」
「だから俺も驚いてるんだよ」
 あらためて言うのであった。
「普通あそこまで変わるか?」
「どうだろうな」
 友人もそう言われると首を捻る。
「ちょっとないんじゃないのか?」
「何であんなに可愛くなるんだ?」
 そして俊はこんなことも言った。
「これだけな」
「御前今何言ったよ」
「えっ、何って?」
「だから今何言ったよ」
 こう俊に問い返すのだった。
「今何て」
「俺何か言ったか?」
「だから可愛いって言ったじゃないか」
 それを言うのである。
「今さっきな」
「あっ、これは」
 言われてやっと気付いたのだ。そう、失言だった。
 しかし言った言葉はもう返らない。それで困った顔になっているとだった。
「ええとな、これってな」
「これって?」
「いや、たまたまな」
 言葉をくぐもらせながらもそれでも返す。かなり苦しいがそれでもだ。
「ちょっとな」
「何だよ、タイプだったのかよ」
「正直言ってそうなんだよ」
 そして遂に観念して述べた。
「実はな」
「やっぱりな。そうだったのか」
「しかし何なんだろうな」
 俊は今度は首を捻った。そしてまた話した。
「あれだけ変わるなんて反則だよな」
「確かに凄い変貌だな」
「それもあんなに可愛いしな」
 またこんな言葉を出す。
「どうしたものかな」
「やれやれ。だったらな」
「だったら?」
「告白したらどうなんだよ」
 友人からの言葉だ。それを告げてみせたのだ。

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