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Act_0 《Hello World》
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いて、そして……

暗い水底へ沈むように、アスナの思考は落ちていく
腐っていくくらいなら
そうだ、終わってしまった方が良い
"自分"が"自分"でいられないのなら──私は、死ぬ事だって怖くない
その覚悟は、もう決めたんだ


「戻ったぞ」


水底へ沈んだアスナの意識を引き戻すように、後頭部へと衝撃が走った
頭を抑えてのた打ち回るアスナの横を通り過ぎ、青いジャケットの裾についた埃を払いながら、アキラは迷宮の入口から姿を現した
《コボルト》の群れを無事に討伐したのだ
所々、青いコートごと切り裂かれた皮膚に切り傷が見える
重症と言う訳ではないが、生傷だらけの姿は少しだけ痛ましいものがあった

──コイツッ

しかし、アキラは眼中に無い、とばかりに完全にアスナは無視している
不意の痛みに頭を抱え、頭を叩いたことと自身を無視していることに対して、抗議の表情を見せるアスナの目の前にガシャン、と大量のアイテムが投げられた
それらは、先程までキリトやアスナを襲っていた《コボルト》からドロップしたのであろう装備品の数々である
どれも装備と呼ぶには相応しくないものだが、売ればそれなりの金銭は稼げるだろう

「なっ……!」

「さすが、"鼠"が寄越すワケだ」

「ダンジョン内でドロップしたアイテムの所有権は依頼主にあるが」

「アンタの臨時ボーナスで良い、懐に入れてくれ」

その言葉に、アキラが意外そうな表情を浮かべる
本来──こういった物も全て依頼主の懐に入る事が多い
この命を懸けた戦いの場において、端金でも金は金である
金銭はこの世界において、何かの対価として支払われる事が多く、あるだけで攻略の支えにも生き残る力にもなってくれる価値の高いものだ

それを自ら捨て、この場限りになるかもしれない他人へと譲り渡す
キリトの行った行為が、働きへの対価だったとしても、この世界では綺麗過ぎる
だが──

「ありがたく受け取ろう」

他者を諭すことほど、意味の無いことも無い
アキラはその瓦礫の山をバックヤードへ格納し、キリトの手にあった黒パンを受け取った
クリームを差し出すキリトの手を制し、何も塗られていない黒パンにかじり付く

──美味しくないのに

過去、アスナはそのままかじりついた黒パンの味を思い出した
手の中にある黒パンはクリームが付いているから、幾分もマシだが、パン単体の味は低価格な分たいした事は無いのだ

「あなたたち、一体何が目的なの?」

アキラに一瞬でも気を向けたことが許せないのか、
アスナは黒パンをかじりながら会話の対象をキリトへと向けた

「先に進むこと、かな」

キリトの目的は、それだけだ
百層クリアすればログアウトが可能になるという、《茅場晶彦
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