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Act_0 《Hello World》
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に並ぶ《コボルト》の群れは、各々アキラへ一直線に視線を向けている

《コボルト》──獣人のような姿をした、雑魚モンスターの1種類だ
武器を扱う程度の知識はあるようで、手に持つ小さな斧が主な武器である
そこから繰り広げられる"一時行動不能"攻撃を起点とした集団での一斉攻撃は、このレベル帯のプレイヤーであれば大抵は死に至る
それは、アキラとて例外ではない

「──だからイレギュラーは嫌いなんだ、クソッ」

悪態の後、左右から飛び掛る《コボルト》を空中で上下に分解し、
アキラは群れの中央へと突貫した













風が、頬を撫でる

「おはよう、細剣──」

「どうして、置いていかなかったの?」

キリトの軽やかな挨拶をアスナの不機嫌な声が上乗せする
"なぜ置いていかなかったのか"
気がついてからの第一声は不服に満ちており、アスナがキリトへと求めたのは、その答えだった

「マップデータが惜しかった、ホントにそれだけだよ」

キリトの返答に、アスナは未だに不満な顔をしている
それも納得は出来る──彼女はあそこで、自分の"おわり"を覚悟したのだから
その"おわり"を踏み躙ったのは、他ならぬキリトとアキラなのだから

「なぁ、腹ごしらえでもしないか? アンタ何も食べてないんだろ」

「──いらないわよ、べつに死ぬわけでもないんだから」

「まあまあ、マップデータの対価だとでも思ってくれればいいよ」

そういい、キリトが出したのは一番低価格の黒パンだった
「結構美味いし」と言うキリトの言葉に、アスナは顔を引きつらせる事しか出来ない
これの何処が美味しいのか
佐田さん──アスナの家のお手伝いさんだ──の料理が恋しくて仕方が無い

「もちろん、工夫はするけどね」

キリトはアスナの指にコツン、と白いビンを当てた
指の先が微かに光り、パンをなぞるように動かすとクリームが塗りたくられていく

──甘そう

この世界で、多分初めてまともに見る甘そうなもの
安価な黒パンの上に塗られただけだというのに

──どうして、こんなに美味しそうに見えるの!?

半ば自棄のように、アスナは黒パンを口へと運んだ
ミルクの柔らかな風味、後味の引く甘さはクセになる程に無骨なパンに合っている
それは、この世界に来て、アスナが初めて美味しいと言えるものだった

「もう1ついく?」

「い、いらないわよっ」

夢中で黒パンを食べていたアスナを見て、キリトは苦笑交じりに黒パンを差し出した
確かに魅力的な提案だが、美味しいものを食べる為に生きているわけじゃない

──自分が自分でいるために

──ゆっくりと腐っていくくらいなら、最期まで全力で戦い抜
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