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騎士の想い
第一章
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第一章

                     騎士の想い
 彼の心にあるのは何か。一つしかなかった。
 騎士である、ならばそこにあるものは一つだけであった。
「私は貴方に全てを捧げます」
 騎士になったその日に相手に告げた。
「それを今誓いましょう」
「その言葉偽りではありませんね」
「私は騎士になりました」
 だからだというのである。
「それが証にはならないでしょうか」
「わかりました」
 相手も彼の言葉を受けて微笑んだ。これが騎士イークリッドと姫エヴァゼリンのはじまりだった。イークリッドは騎士になったその日に誓ったのである。
 イークリッドは赤い髪に青い目をした美男子であった。端整な顔立ちに長身で長い手を持った見事な身体を持っていた。武術だけでなく学問や芸術にも秀でている男だった。
 そしてエヴァゼリンもまた。豊かな金髪に湖の色をした瞳の美しい姫であった。幼さが残るがその儚げな美貌が帝国に知られるようになっていたのです。
 イークリッドは彼女の騎士として忠誠を捧げると誓った。その彼を皇帝はこう評した。
「獅子になれる」
「獅子にですか」
「そうだ、なれる」
 こう彼を評したのだった。そうしてだった。
 彼は騎士になってから多くの戦いを経ていた。それは戦場での戦いだけではなかった。騎士としての戦いも多く経てきていたのである。
「エヴァゼリン姫?あの」
 ある貴婦人はある日エヴァゼリンに対してこう言った。
「所詮は貧しい侯爵家の三女ではありませんか」
「それがどうかされたのですか?」
「その程度だということです」
 眉を顰めさせるイークリッドに対しての言葉であった。
「如何に姫と言われていてもです」
「姫をそうけなされるのか」
 イークリッドはその彼女に対してつっかかりだした。
「何故その様なことを」
「事実を言ったまでです」
 貴婦人は平然としたまま彼に返した。
「それにまだ」
「まだ?」
「若いですわね」
 二人は宴の場で言い合っていた。宴であるがそれでも二人は酒を飲むのも御馳走を食べるのも止めてそのうえで言い合っているのである。
「それでまだ。どうだというのですか」
「姫を侮辱することは許しません」
 彼は自分のことよりも怒るのだった。
「決してです」
「決してだと仰るのですか?」
「そうです、その通りです」
 言いながらさらに怒らせる。そうしてであった。
「姫をこれ以上侮辱されるのならば」
「どうされるというのですか?」
「姫の名誉を守らせて頂きます」
 そうするというのである。
「何があろうとも」
「何があろうともと仰いましたね」
「はい、それが何か」
「わかりましたわ」
 貴婦人は彼に対して悠然と言葉を返してみせた。
「それではです
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