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DAO:ゾーネンリヒト・レギオン〜神々の狂宴〜
第二十六話
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――やり直したかった時間を《変遷》させればいい。消したい存在は抹消できる。

 代償はただひとつ。『栗原清文』という存在が消滅し、キミは完全に《白亜宮》に取り込まれることになる。それだけ。だがそのキミというたった一つの犠牲で、世界は全て救われる。

 どうかな?」

 ああ、それは――――勝利するための、可能性だ。

 なるほど、この提案を受け入れれば、セモンは敗北する。だが、他の人々は勝利するだろう。VRワールド全てから《白亜宮》の爪痕を抹消して、まっさらな状態に戻すことすら可能なはずだ。

 それだけではない。SAO事件で死んだ全ての人の死を『なかったこと』にできるかもしれないし、そもそもSAO事件自体をなかったことにできる。

 これがあれば――――世界を、救える。

「清文……駄目だ! 選ぶな!」
「セモンさん……」

 遠くで、ハザードと刹那が叫ぶのが聞こえる。

 だが、その声はセモンには届いていなかった。

 全てをもとに戻せる。その可能性が、今、目の前にある。それをして、迷わずにいられる人間がいるだろうか――――?

 いや、きっといないだろう。

 


 だが。





「……いらない」
「ほぅ?」

 それを振り払う人間なら、無数にいるはずだ。

「いらないよ。だってお前の言うそれは、《停滞》じゃないか。《回帰》じゃないか。結局、後戻りしてるだけだろ?
 昔あったことを、ぐちぐち言ってても、結局は何も変わらないんだ」

 それは。

 ずっと昔に、シャノンがポツリ、と呟いた言葉だった。

『ずっと、停滞する事が最善だと思ってた。けどさ、そんな事きっとないんだよね。
 昔あったことを、ぐちぐち言ってても、結局は何も変わらないんだ。
 それよりも――――』

 それで彼はPK業に手を染めても自分の罪を顧みなくなったのだが。

 どれだけ皮肉があっても、セモンはその言葉が、大切な言葉だと信じている。

「それよりも、前に進む」

 《主》の顔が、初めて歪んだ。悔しそうに、けどどこか楽しそうに、歪んだ。

「確かに、俺達は変わらなければいけない。全ての人を、変えなくちゃいけない。変えたい過去もある。掴み取りたい未来もある。

 でもそれを、『過去を変える』ことで実現させちゃだめだ。それを超越して、未来に進まなくちゃいけないんだ。

 人は変わる。人は変われる。世界も変わる。世界も変われる。
 
 けどその変化は、きっといつだって、良い方向にいかせられるように努力しなくちゃいけない」

 それは、本心だった。

 セモンの中に、ずっとずっと昔から――――それこそ、生まれる前から存在している、《起源》。

 
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