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クルスニク・オーケストラ
第十楽章 ブレーン・ジャック
10-3小節
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っただろう。今日までよくやってくれた。お前をエージェントに雇った判断は間違いではなかった」
「身に余るお言葉です、社長」

 手を差し出し、社長と握手した。手を握り合うというよりは、すっぽり包み込まれた。

「わたくしのほうこそ、精霊に呪われた小娘を何年も重用していただいて、感謝の言葉もございません。家以上に、親元以上に、クランスピアはわたくしにとってのホームでした」

 握手が解けた。いよいよもってジゼル・トワイ・リートの生き延びる道が――閉ざされる。

「実行はいつになさるのですか?」
「諸処の手続きをすませて人事を整えてからになる。場所はマクスバード/エレン港だ。カナンの地の出現次第、私は《鍵》の少女を連れてかの地へ向かう」
「了解しました。死後わたくしは、かの地から社長とエル嬢のご無事と大願成就を、僭越ながら見守らせていただきます。ご武運を、お祈り申し上げます」
「最期まで変わらんな、お前は」
「……変われずに今日まで来てしまいました」

 永の暇乞いもそこそこに。わたくしは社長室から退出した。
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