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クルスニク・オーケストラ
第十楽章 ブレーン・ジャック
10-1小節
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ガーに向けた。

「かかってらっしゃい、ルドガー。初日からどれだけ実力をつけたか、先輩がチェックしてあげます」
「あんたなんか、もう先輩でも何でもねえ!」

 ルドガーが双剣を猛然と揮ってきた。

 一度リドウ先生から離れておきましょう。お互い邪魔になってはいけませんから。

 リドウ先生はDr.マティスとMr.スヴェントを相手取るようですので、ルドガーとミス・ミラのお相手はわたくしが務めますわ。
 リーチと武器の数で劣るのは承知の上。ルドガーに隙が生じるまで回避に費やします。

「本気でやれよ! ちくしょう!」
「《鍵》である貴方を殺す権限をわたくしは持ちません」
「ふざけろ!」

 っ! 《レディの顔に傷をつけるなんて、しつけが成ってないな》。ほんの数ヶ月で格段に実力をつけても、そういう部分は初日と変わらないわね。《最初は素質アリと思ったけれど、それはエルちゃん専用だったわけか、ロリコン》。


「条件はやかましいんだが、まず必要なのは生体回路――」
「がっ!」
「しまっ…!」


 あら。そちら、もう片付きましたの。さすがはリドウ先生。では陣の外へ退避しておきましょうか――っと。

 Dr.マティスとMr.スヴェントが、壁に刻んだ起動式の一部に磔にされている。こうなった以上、発動は目の前。


「で、隠し味は、生贄だ」


 ――ホールの床全体が、円状に極彩色の輝きを放った。

「きゃああ!」
「ミラ!!」

 ホールに開いた《穴》に落ちるミス・ミラと、彼女の手を掴んで《穴》の中で槍を刺して踏ん張るルドガー。

 ……そこで掴まなければ、よけいな苦悩を背負わずにすんだでしょうに。中途半端な同情や正義感は身を滅ぼすって、教えてあげればよかったですね。
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