第十楽章 ブレーン・ジャック
10-1小節
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ペリューン号。円柱型の中央ホールにて。集まっていた政治家は、リドウ先生率いる混成エージェント部隊が昏倒させました。
今、中央ホールにいるのは、わたくしとリドウ先生だけ。
連れて来たエージェントたちには……その、別の任務に就いて、もらいましたから。
「リドウ室長。侵入者が左舷第3エリア……いえ、中央連絡通路を突破。この中央ホールまで間もなくかと」
「頑張るこった」
リドウ先生はくっくと笑う。分かってらっしゃる。侵入してきた者たちがルドガーたちだと。
ルドガーは積極的に戦地に入りたがるタチじゃないから、きっと発案者はDr.マティスね。彼、いかにもお人好しでしたから。
甘くて若いとなれば、大体の危険地帯には望んで飛び込んでしまうのよねえ。わたくしも経験があります。
「それよりジゼル。召喚陣の用意は」
「今終わりましたわ。後は生体回路をセットすれば起動します」
これも算譜法(ジンテクス)に詳しい《レコードホルダー》のおかげです。生贄式マクスウェル召喚法を編み出した張本人。2000年以上前の人物の記憶を想起しながらの作業でしたから、こっちもクタクタです。
「本当にこんなモンでマクスウェルを連れ戻せるのかねえ」
「《戻せます。絶対》とのことですので、後は天命を待ちましょう?」
ホールのドアが乱暴に開け放たれた。ふり返る。人が雪崩れ込んできた所でした。
皆が皆、息を切らしていた。Dr.マティス、Mr.スヴェント、ミス・ミラ、エルちゃん。そして、ルドガー。
全力疾走の後の息切れを堪えながら、ルドガーはホールを見渡した。尽く机に突っ伏している政治家。そして、正面にはリドウと、ジゼル。
「リドウさん……何であなたが!?」
「マクスウェルの召喚を手伝ってやろうっていうのに、そんな顔するなよ」
「ハッタリにしちゃ三流だな」
アルヴィンが銃を構える。セーフティはすでに外されていた。
「クランスピア社が、マクスウェルを最初に召喚した術士、クルスニクが興した組織でも?」
ジュードやアルヴィンが驚いたように顔を見合わせている。だが、ルドガーの問いたい相手は別だ。
「ジゼル、何で…そっちに…」
最も問わねばならないこと、問いたいことを、自分の指導係にぶつけた。
「『そっち』とはどこのことです?」
「そっちはアルクノア側だろ!? なのに何でエージェントのジゼルが」
ジゼルはリドウと背中合わせに、メスを、ナイフを、ルドガーたちに向けた。
「上司の命に従うことのどこがおかしいんですの?」
そう言い放った女は、まぎれもなく一人の「仕事人」だった。
わたくしはナイフの切っ先を、おそらくは怒りに震えているルド
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ