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横浜事変-the mixing black&white-
結末は、黒幕なしでは語れない
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でも考えていたわけじゃないんだろう」
「そんなこと考えてる余裕があるなら、そもそもここにはいないさ」
ミルの冗談に乾いた笑みを浮かべた少年――要は地上から吹き上げる僅かな硝煙の臭いに安堵の顔を作りながら呟いた。
「ただ、俺の掲げた思想が壊れそうになっててさ」
「掲げた思想?」
「そう。俺は軽い人間関係が嫌いだ。だから俺は、死ぬ限り別れの訪れない世界で生きているわけだし、ヤーさん連中と安定した関係性も得ている。でも下にいる奴を見て思ったんだ。偶然は固い信念をいとも簡単に緩めちまうんだってな。友達なんていらないって決意したのに、良い奴が接してきたらあっさり転がっちゃうような感じだよ」
彼は一本道の一点を見つめてそう言った。その視線の先に誰かいるのかとミルも目を追うと、そこには複数の殺し屋達が壁に張り付いて銃を敵の方にかざしていた。あの学生がいる集団だ。もしかしたら、と思いながらミルは彼に問うた。
「誰か知っている人でも?」
「一人だけな。ああ、なんか笑えてくる」
要は大きく息を吸ってからそれを勢いよく吐き出した。まるで鬱屈した感情を力任せに放り出すように。
「俺もあいつもバカだよ。他の奴らが一歩後ろに下がって接していた理由。それは俺らが元から周りと外れてたからなんだよ。感覚が違ってたんだ。それなのに俺は負け惜しみみたいな言い訳して……最初から諦めたお前がやっぱり正解だったんだな」
独り言のように呟いた彼は、さっきとは打って変わり清々しい顔つきをしていた。そんな彼を
睥睨
(
へいげい
)
したミルは後押しするように言葉を紡ぎ出した。
「自分の素顔は素直に扱った方がいい。じゃないと人にも街にも弄ばれる」
そう言った彼女は、自分がどうしてか晴れやかな気持ちになっていくのに気付いた。まるで心を覆っていた霧が取れていくようなすっきりした感覚。
それはもしかしたら、ミルがこの国で掴んだ経験値だったからかもしれない。『殺す』以外に導き出した進化を促すヒント。彼女はそれを真に受けとり、無表情の裏側で微笑した。
――……どうやら、私はこの国に慰められたようだ。
――正直、あまり嬉しくはないな。
一方で学生服の殺し屋はその言葉を噛み締めるように口を動かした。何を感じたのか、ミルには分からない。だが彼が前向きな意志を持っていたのは確かな事実だった。
「素顔、ね。分かった。なら俺はあいつに答えを教えるよ。できれば殺し合いたくないけど」
*****
大河内の冷静且つ大胆な考えに、黄緑パーカーの青年は苦い顔をして黙り、元々無口な当本人達はいつもの無表情に戻った。そして一斉に道に出て銃を構え――
パパパン、パパンという乾いた音と共に彼
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