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マフラー
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穂は一人想い焦がれるだけであった。それを知るのも秋穂だけであった。
 秋穂はぼうっと考え事をする事が多くなった。講義やサークルの間も上の空でいる事がしばしばであり注意される事もあった。物思いに耽り一人でいる事が多くなった。
 「遂に好きな人でも出来たのかしら」
 「だったらいいけれど」
 友人達はそう囁き合った。だがそんな囁きも今の秋穂の耳には入らなかった。
 健児への想いは募るばかりであった。だがそれを健児に告白する事は出来ない。健児と顔を合わせる時に挨拶し話をするだけである。それが秋穂の心をより苦しめていた。
 やがて二月になりバレンタインデーが近付いてきた。義理チョコであるが秋穂もチョコレートを買う。
 「本命はいないの?」
 百合が尋ねるが答えられる筈がない。はぐらかすだけであった。
 「健児君にも買ってあげなくちゃね」
 夜の街を歩いていた。商店街はチョコレートと恋人の話で満たされている。
 「どれがいいかなあ」
 お菓子屋で良さそうなものを選ぶ。健児は甘い物が好きだった。
 「自分で作ろうかな。やっぱり」
 そうでなければ自分の気もすまなかった。好きな人には自分の想いを込めたものを与えたいものである。
 「だったら色々と要るわね。何買おうかしら」
 その時だった。店の外に健児がいた。
 「あ・・・・・・」
 学生服にコート姿である。部活の帰りだろうか。そして一人ではなかった。
 健児の傍らには女の子がいた。健児の学校の制服を着ている。同じスポーツバッグを持っている。バスケ部の娘らしい。
 髪は茶色で短い。ショートヘアである。背が高くすましたボーイッシュな娘であった。秋穂とは全く正反対な感じの娘であった。
 二人は腕を組んで談笑している。恋人同士であるのは一目瞭然だった。
 「・・・・・・・・・」
 二人は暗い道を二人で歩いていく。人ごみに入り消えていった。秋穂はそれを後ろから見る事しか出来なかった。
 秋穂は全てを悟った。自分の想いが片想いに過ぎなかったということを。いや、それは最初から解かっていた。悟ったのは自分の想いは健児の想いとは全く違っていたのだ。そして自分は健児に受け入れられる人ではなかったのだ。
 秋穂は俯いた。ぽろぽろと涙が零れる。涙は頬を伝い雫となって落ちる。雫となって落ちた涙はアスファルトに弾けそれを濡らしていく。夜の灯りに照らされたアスファルトの色がそこだけ変わる。
 秋穂は二人が歩いていった方とは逆の方へ足を向けた。そして一人そのまま歩いていった。
 秋穂が帰って来たのは真夜中であった。それに対し晴美は何も言わなかった。何かを察しあえて何も言わなかった。秋穂は部屋に戻りそのまま寝た。
 翌日昼頃まで秋穂は部屋から出
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