名を語られぬ彼らが想い
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――バカが。お綺麗なクソガキが俺に敵うかよ。お前らが此処に出撃してくるなら……白馬はどうなる?
雛里の敵は、あくまで郭図。彼女が頭から外す策を使える軍師。
「民なんざ後からいくらでも湧いてきやがるんだ。例え二回目だろうと……たった千の兵如きで白馬が燃えるのを防げるわけねぇだろバーカ。てめえと黒麒麟がやった策、そっくりそのまま、“悪用して”返してやんよ!」
雛里の失態は……外道な手法を迷うことなく使える郭図と違い、民を放っておけぬ優しい心を持っていた事であった。
たっぷりと高笑いを空に放った後で、郭図は一人、満足気に喉を鳴らす。
「さぁて……これで官渡の状況が動くだろ。烏巣に来やがれ、曹操軍。こちとら準備は万全だぁ。後は……クカカッ、あのクソアマ二人を殺す為に手を打つだけだな」
嘲りは大嫌いな二人に向けて。男は一人、溢れる愉悦の感情から笑みを抑え付けず、悠々と夕暮れの空の下を去って行った。
両軍の戦況はたった一つの伝令によってひっくり返った。
白馬の街が火に沈んでいる……と。
洛陽を燃やしたように、郭図は白馬の街に仕掛けを施してあったのだ。徐州での雛里と秋斗は残した策で袁家を街から追い出し糧食を奪った。民にキズ一つ付けずに。
しかし郭図は民を傷つける事によって糧食と軍の行動を縛りに掛かったのだ。
その報を聞いて白馬義従が怒りに狂わぬわけが無く、それでも守りたいのが彼らの始まりであったから、雛里の指示に従い白馬への撤退を余儀なくされる。
追撃はしつこく、曹操軍はそれなりの被害を受けることとなった。
これで白馬の街の復興に少なからず従事せねばならず、糧食でさえ炊き出しに使わなければならない。必然、出撃出来る兵数も減る。
次に雛里が決定した事は一つ。黒麒麟の身体の独自行動によって蜘蛛の巣を完成させる事。少ない数をさらに分けて、彼らを延津の付近にまで伏せさせたのであった。
彼女の想う黒が……己が過去を赤に賭けているとも知らずに。
蛇足 〜相違な想い〜
『なんで、なんで御大将を戻そうとしねぇんだよ!』
『あんたは嘘つきだ!』
『俺達はあの人と共に戦いてぇのに!』
絶望の黒。
頭に響くのは怨嗟。散らした命が私を責める。
「……っ……っ!」
飛び起き、荒い息を吐く間も無く、喉を込み上げてくる異物を掛け布の上に吐き出した。
何度も何度も、胃の中が空っぽになっても、吐き気が止まらなかった。
嘘つき、と皆が責める。
分かっていたはずなのに、矛盾を含んだ後に彼らの命を選んで散らしただけでこうまで違う。
これは自分が作り出した妄想の産物だと分かっている。でも……自責
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