名を語られぬ彼らが想い
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んだよ徐晃隊にはっ、想いがあんだよ……俺達黒麒麟にはなぁ!
「「ははっ! 世に……平穏をっ!」」
重なる笑いと声は同時であった。
数瞬で接触する場所まで来た時に、彼らは最期の笑顔を浮かべる。俺達は幸せだったと、歓喜を込めて。
ちっぽけな命を輝かせれば誰かを救える。それがこんなにも嬉しくて誇らしい。
――だから、戻った時に俺らが居なくても悲しむなよ、御大将。
そのまま彼らは……弾き飛ばされる寸前で身体を落とし、
牽く馬、鎧に覆われていない脚の部分を、全力で剣を振るって切り飛ばした。
自分達に真正面から突っ込んでくる車によって、挽き肉になるのも承知の上で。
馬の大きな嘶きと、肉の潰される音は同時。血霧が舞い、肉片が飛び散った。それでも彼らは、敵の兵器の一つを壊した。
多くの命を蹂躙した兵器を、たった二つの命で無力化した。それがどれだけ大きな働きか、見ていた者達に分からぬはずがない。
しん……と静まり返る戦場では、誰も言葉を零すモノが居なかった。
彼らは文字通り特攻したのだ。命を投げ捨てて戦果を挙げた。その在り方はいつでも変わらずに、“多くの誰かを救うために命を賭ける黒麒麟の身体”。
彼らには理解など必要ない。自分達が多くの命を助けられたなら、彼の描く平穏な世の為に戦えたなら、それでいいのだ。
そして敵には恐怖を、味方には……狂信を。
狂気が生まれた。その行いに魅せられるモノが幾多。他ならぬ黒の部隊の雄叫び。黒の臣下たる彼らが我らを救ったというのに、白の臣下たる我らに同じ事は出来ぬのか。
否、否であろう。誇り高き白馬長史は黒の友。ならば我らは、彼らの戦友であるべきだ。
命を賭けるとは……生温いモノでは無く、彼らのようにならなければ足り得ない……見ていた誰もがそう思って武者震いを覚えた。
「俺達も行くしかねぇ。いや……行かなきゃならねぇ」
「ああ、この命を捨ててでも勝利を。そしてあの方の家を、我らが王の家を……俺達の命を対価にしてでも取り戻すんだ」
恐怖が狂気に呑み込まれ、憎しみを願いが呑み込んだ。
怨嗟に燃えていた白馬義従は続々と、冷静さを取り戻していく。
即座に駆ける白の一団は十頭で一つ。右肩に黒を巻き、一頭の馬の如くバリスタに向かい行く。撃ち出される槍は巨大にして鋭く……されども彼らには脅威とならない。
二人が貫かれて息絶えた。止まる事は無く、ぴったりと息のあった連携で右へ左へと誘いを掛ける。
二撃目。一人の腕が千切れ飛ぶ。気にすることなく、集団行動を乱さずに彼らは突き進んでいった。
その戦い方は白では無い。漸く辿り着いた場所で、突き出される槍にも臆さず前に踏み入る彼らは、黒麒麟の身体と同等であろう。
精密に作られた兵器は
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