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【SAO】シンガーソング・オンライン
外伝:ブルハ、ブルハ以外を歌う
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じゃ、普段のより更に古い曲になるけど、いま思いついたのをやってみよう」
「おおー!流石はアインクラッドの吟遊詩人!」
「その仇名まだ絶滅してなかったのか……だいぶ久しぶりに聞いたぞ」
「?」

 ともかく、咄嗟に俺が思い出したその曲は、恐らくだが普段のものよりは可愛い部類に入るはずだ。

 ただ、ひとつだけ問題があり――その曲は、ギターの演奏難易度が恐ろしく高いことで有名だったのだ。

 昔に何度か自棄になって練習したことがあるが、素人に毛が生えた程度だった当時の俺には余りにも難しく、断念せざるを得なかった。おそらく今弾いても弾ききれるかどうかは怪しいだろう。

 だが、他に咄嗟に思い出せる「かわいい曲」というのもない。
 悩んだ俺が弾きだした答えは、取り敢えずそれを演奏しながら何か別の曲を思い出し、「気が変わったから別のを弾く」と言ってお茶を濁すという果てしなくせこい戦法だった。
 ケ・セラ・セラ。人生なるようになるものだ。

 楽譜も歌詞も一応頭には入っているが、細かい所は自信がない。どうせ相手もこの曲を知らないだろうし、何か別の曲さえ思いつけばそれで解決する。記憶の断片を必死でつなぎ合わせながら、俺は癖のあるメロディラインを指で紡いだ。


 ずっと気に入らなかった顔のそばかすを、指でなぞって溜息こぼす――

 本気の告白だったのに、甘い愛は紅茶の底に落ちた角砂糖みたいにぼろぼろだ――

 脂肪と一緒に減ってしまった胸に刺さるこの想いは未練なのかな――

 まったく、星占いになんて期待した私が馬鹿だったわ――

 せめてもうすこし手を繋いで歩けるのなら、私はそれだけでも――


 予想に反して指は滑り、聞けるレベルには達した演奏になっている。
 これはひょっとしたら他の曲を歌うより、なんとか一番だけ歌い上げて締めた方が賢いか?
 そんなどことなく邪な事を考えながらちらりとリズなんとかの方を見た俺は――そこで、聞いている筈の客がいなくなっていることに気付いた。

「――あれ?さっきの嬢ちゃんどこいった?」
「なんか、泣きながら向こうに走って行っちまったよ?」

 いつのまにか近くに来ていた中年のアバターが通りの右側を指さして言う。

「え、何で?」
「さあ……あ、ひょっとしてあれじゃないかな?」
「あれって……あ、まさかあの子?」

 小指を付きだし、それをもう一方の手で折り曲げるジェスチャーを見た俺は、漸く可能性に照らし合わせて推論を立てた。ひょっとしたらヘビー級に重い恋心を打ち砕かれた直後だったり――?

「そりゃ悪いことしたなぁ……砂糖どころか塩を塗っちゃったよ」
「ま、そんな日もあらぁね」

 若いうちしかああいう事は出来ん、とおじさんはカラカラ快活に笑
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