三十七 たからもの
[7/7]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
なきゃね」
「…え?」
「確か日向ネジとの試合なんだろう?ああ、でも彼は君の親戚だったか…」
ナルではなくネジを応援するのか、と暗に訊ねられ、ヒナタは弾かれたように顔を上げた。珍しく声を張り上げる。
「わ、私はナルちゃんを応援する…!」
「だが予選を見る限り、ナルに勝ち目はないよ?それでも?」
わざと皮肉を告げるナルトを、ヒナタはキッと見返した。
「ナ、ナルちゃんなら勝てるよ…きっと…っ!」
口ごもりながらもきっぱりと言い切ったヒナタを、ナルトは微笑ましげに眺めた。静かにチャクラを手に込める。
「それなら、最後まで観戦しないとね」
穏やかな笑みを湛え、ナルトはヒナタに手を翳した。怯える彼女の身をやわらかな光が包み込む。次第に身体が楽になっていく事実にヒナタの表情が困惑から驚愕へと変わっていった。
「まだ本調子じゃなかったんだろう?」
驚いて声が出ないヒナタからナルトはすっと手を下ろした。彼女の身を包みこんでいた光が徐々に引いてゆく。その頃には身体の痛みがヒナタから完全に消えていた。
「ナルの試合、最後まで見届けてあげてね」
そうナルトに頼まれても、動転のあまり身体を強張らせるヒナタ。その様子に苦笑して、彼は丸太から身を起こした。
踵を返す。不意に立ち止まって、ナルトは肩越しに振り返った。
「本選当日、この演習場で待っていて。君の大切な友達が試験前にここを立ち寄るから…」
応援してあげてね、と最後に言い残し、演習場を後にする。折しも波風ナルが下忍になった場所で、ヒナタは暫し立ち尽くしていた。
丸太から伸びる影が彼女の影をも呑み込んでゆく。カア、という鴉の啼き声が飛び立つ際の羽音を掻き消した。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ