三十七 たからもの
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しおり。
捜し求めていた宝物が突然目の前に現れて、ヒナタは思わず瞳を瞬かせた。慌てるあまり引っ手繰るように受け取る。汚れ一つないそれをまじまじと見つめた後、ヒナタは「よかった…」と喜びを噛み締めた。大事そうに両手で胸に掻き抱く。
「あ、あの…ありがとうございます…」
引っ手繰るように受け取った事で気を悪くさせてしまったのでは…。へにゃりと眉を下げてヒナタはお礼を述べた。気にしている彼女の様子に、ナルトは穏やかな笑顔で答える。
「木ノ葉病院の廊下で拾ったんだけど、誰のかわからなくてこちらも困っていたから…。よかったよ」
優しい微笑みを目の当たりにしてヒナタの顔が赤くなる。ナルトから視線を外し、「あの、その…」と彼女は口ごもった。上手く言葉に出せないヒナタに、ナルトは視線を注ぐ。雲の合間から射し込む斜陽が、彼女の手の中にあるしおりを赤く照らした。
「かわいらしいたんぽぽだね。自分で押し花にしたの?」
その問いに、もじもじしながらもヒナタは「た、宝物なんです…」とか細い声で答えた。
「わ、私の大事な…お、お友達との…た、大切な思い出なんです…」
「…お友達って、もしかして波風ナル?」
ナルトの問いに、ヒナタは目を丸くした。どうして、と訴えてくる彼女の瞳に、ナルトの微笑が映る。ヒナタの隣にある丸太を背にして、ナルトは言葉を続けた。
「仲良さそうだったからね」
「ほっ、ほんとう…?」
「ああ」
ナルトの答えにヒナタは頬を上気させた。
ナルはヒナタにとって本当に特別な存在である。引っ込み思案であったヒナタの、はじめての友達。そのため、親友とまでは言えないけれど、友達同士に見えたらいいなあと彼女はささやかな夢を抱いていた。
だから今、仲良さそうだったと言われ、ヒナタはとても嬉しかった。ぎゅっとしおりを握り締める。
「ナ、ナルちゃんってね…すごく強くて優しくて…。わ、私、憧れてるの…」
「…そうか」
「だ、だから、その…笑っちゃうかも、しれないんですけど…。ナルちゃんと初めて友達になった、そのきっかけのたんぽぽを押し花にしたんです…」
それにたんぽぽってナルちゃんに似ている気がして…と一生懸命に話すヒナタに、ナルトは目を細めた。
「だから、このしおりは…私にとって、大事な…宝物なんです…」
「………」
楽しそうに語るヒナタの言葉に、ナルトは目線を下げた。微かに哀愁を帯びた瞳を見られぬよう足下を見下ろす。放射状に光線を放つ太陽がその場にいる者達の影を長く伸ばしていた。
少しばかり離れた木の影。僅かに大きくなったその輪郭に、ナルトはぴくりと眉根を上げた。傍の木に止まった一羽の鴉を目の端で捉える。
じっとこちらを見下ろす視線を敢えて受けながら、彼はヒナタと顔を合わせた。
「それじゃ、本試験も応援し
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