三十七 たからもの
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開く。会合が終わったのか、議場から出て来たカカシが自来也の姿を見て目を瞬かせた。
「あれ、自来也様?ナルの修行を見てくださるとエビス先生が…」
思いがけない出会いに、思わず身を硬くするカカシ。
うちはサスケの修行を見なければいけないため、彼は波風ナルの修行をエビスに頼んでおいた。しかしながら途中で自来也に預けたと、後からエビスに聞いたのである。
カカシとてサスケの修行の合間に今回の会合に参加したのだ。今頃休憩を終えたサスケが苛立ちを募らせながら自身が戻って来るのを待っているだろう。
故に忙しいのは事実だが、己の教え子を見てもらっているにも拘らず、挨拶も出来ず仕舞いだった。その事を恥じてカカシはすぐさま自来也に会釈し、礼を述べる。
「それでどうですか?ナルの様子は…」
気遣わしげな視線を向けてくるカカシから自来也は目を逸らした。おもむろにしゃがみ込み、床にのの字を書く。
「横取りされてしもうた…」
は、と問い返すカカシの眼前で、拗ねたように蹲る。
がやがやと議場から出て来た忍び達が、尊敬すべき三忍の一人ががっくり肩を落としているのを不思議そうに眺めていった。
(どうしよう…)
茫然と立ち尽くす。所在無さげに彼女は目線を彷徨わせた。
あれは宝物なのだ。他の人には何でもないモノだけれど、自分にとっては大切な思い出。
あんな大事なモノを失くすなんて、とヒナタは瞳に涙を浮かべた。
まだ身体の調子は万全ではない。外出も禁止されている。
それでも彼女は失くしたモノを捜しに外へ出た。家族には内緒でそっと家を出て、朝からずっと捜しているのだが、何処にも見当たらない。
演習場の丸太にもたれかかりながら、ヒナタは小さく嘆息した。空高くあった太陽がそろそろ西に傾きかけている。物悲しい鴉の声が彼女の不安をより一層掻き立てた。
病室で落としたのだろうか。それとも木ノ葉病院から家までの間に失くしたのだろうか。
おろおろと目線を落とす。ぽたりと零れ落ちた涙が地面に小さな滲みを作った。
「大丈夫?」
不意に声を掛けられ、ヒナタははっと顔を上げた。何処かで見たことのある、だが木ノ葉の人間ではない者が立っている。気遣わしげな視線を向けてくるその人は、ヒナタにとって唯一無二の憧れの人にそっくりだった。
「なにか捜してるの?」
半泣きのヒナタの顔をナルトは心配そうに覗き込んだ。ナルと同じ金の髪がさらりと揺れる。
「その…あ、あの」
同じ中忍試験を受けたと言っても、突然別里の者に声を掛けられ、ヒナタは戸惑った。益々込み上げてくる涙。思わず後ずさる彼女に、ナルトは「もしかしてコレ?」と木ノ葉病院の廊下で拾ったモノを見せた。
かわいらしいたんぽぽの
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