三十七 たからもの
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がとだってば!シカマルも修行頑張れってばよ!!」
林檎を受け取ったナルが満面の笑みを浮かべる。その瞳は先ほどまでベッドにいたとは思えないほど、キラキラと輝いていた。フカサクの後を追い、ひょいっと窓から飛び降りる。
暫し呆けたように突っ立っていたシカマルは目線を窓から外した。
ベッドの上に乗せたフルーツセット。その中で一つだけ残った最後の林檎が赤い輝きを放っていた。
嵐のように修行へ行ってしまったナルが寸前まで寝ていたベッド。そこに腰掛けたシカマルは、未だぬくもりが残るシーツにそっと触れた。
「ライバルを応援すんなよな。めんどくせー」
試合相手ではないとは言え、同じ本試験を受けるライバル同士。それなのにナルは自分を応援して行った。
億劫そうにフルーツセットから林檎を取り出す。一口齧ると甘い果汁が唇に滴った。ぐいっと手の甲で拭い取る。
「…修行、やるか〜」
何時もなら面倒臭いの一言で片づける代名詞。確実にその一つである修行に、シカマルは珍しくやる気を出した。病室を後にする。
ほんとめんどくせー奴、と林檎を齧る口元は緩んでいた。
その吉報に畑カカシは驚きの声を上げた。
「えっ、ハヤテが…」
火影をはじめ、木ノ葉の忍び達――上忍や特別上忍といった一部の者が額を集める議場。ご意見番である水戸門ホムラ・うたたねコハルの間に座する三代目――猿飛ヒルゼンは、火影の証たる笠を脱ぎ取ると重々しく頷いた。
「うむ…。今朝、目を覚ましたという報告があった」
火影の答えに、周囲から安堵の息が零れた。同じく歓喜の色を目に湛えたカカシだが、彼はすぐさま顔を引き締める。
「…それで、あの晩何があったのです?」
当然ハヤテからあの夜気絶していた理由を聞いているものだと思い、端的に問う。同時にみたらしアンコが「まさか大蛇丸…!?」と身を乗り出した。だが火影の返答は思いがけないものだった。
「何も憶えておらんというのじゃ」
「は?」
火影を取り囲んでいた忍び達が皆それぞれ困惑の表情を浮かべる。隣の同僚と顔を見合わせた並足ライドウが「敵に記憶を消されたということですか?」と進言した。話す時に引き攣る左頬の火傷の痕が痛々しい。
「いや、そう判断は出来ない。何か強いショックを受けて、一時的な記憶喪失になっている可能性もある」
ライドウにカカシが否定を返す。彼の隣で思案に耽っていたアンコが口を開いた。
「なら、山中上忍に頭の中を覗いてもらうというのは…?」
「病み上がりの者にそんなことは出来ん。暫く病院で安静にさせよう。ハヤテには休息が必要じゃ。……それに皆、大方見当はついておるのではないか?」
そこで言葉を切り、火影は口元を隠すように手を組んだ。
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