三十七 たからもの
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カマルは嘆息した。
「ちったあ落ち着け!!身体休めるのも修行の内だっての!」
火照る頬を隠すようにわざと声を張り上げる。どことなく明るくなった病室で自分の声が響いた。居心地は悪くなかった。
「あのな。お前が寝てたのは一日だけ。本試験まで二週間ある。まだ間に合うっつーの」
「もう二週間しか無いんだってばよ!?呑気になんていられないってば!」
逆に言い返される。ナルのもっともな発言にシカマルは言葉を探した。沈黙が降りる。
頬を膨らませたナルのお腹からくぅ〜っと微かな音がした。
再び訪れる沈黙。
ぶはっと耐え切れずにシカマルは笑いだした。「ちょ、おま…」と言葉にならぬ声を笑い声の最中に漏らす彼の前で、ナルは顔を真っ赤にさせて「わ、笑うなってばよ〜」と地団駄を踏む。静の象徴であった病室が動へと変わりつつあった。
一頻り笑い、若干涙を浮かべたシカマルが「ほらよ」と何かを放り投げる。ぷくりと頬を膨らませていたナルは、自身の手の中に落ちてきた鮮烈な赤に瞳を瞬かせた。
「クソめんどくせーけどチョウジに見舞いのフルーツセット買って来たんだ…。医者がダメだっつーからよ。一緒に食おうぜ」
この台詞をチョウジが聞いたなら、「ボクをダシに使わないでよ」と苦笑するだろう。どちらかと言えば、チョウジのほうがナルの見舞いのついでである。
しかしながら焼肉食べ過ぎでの腹痛が原因であるチョウジと、病院前で倒れていてそのまま目覚めないナルを天秤にかけたら、後者のほうが誰だって心配だろう。
三つある林檎の内、一つを手渡され、ナルが大きく口を開く。彼女に倣ってシカマルも手にした林檎を齧ろうとした。
だがナルの口元にあったはずの林檎が何時の間にか消えている。
困惑する二人の耳に届いた、しゃりっという音。それはベッドから少しばかり離れた窓から聞こえてきた。
「チャクラは回復したようじゃの。それじゃあ、早速修行にかかるか」
しゃりしゃりと心地よい音を立てながら、蛙が窓辺で林檎を齧っている。髭を生やしたその蛙の顔にナルは見覚えがあった。
「蛙じいちゃん!無事だったんだってば!?」
「ワシの名前はフカサクじゃよ。ナルちゃん」
己の身体と同じ大きさの林檎をひょいっと持ち上げる。そしてフカサクはおもむろにその林檎を片手で潰した。跡形も無く砕けた林檎の末路に、ナルが目を見開く。
「ナルちゃんよ。今の林檎と同じ大きさの石を砕けるくらい、鍛えちゃるけん。ついてきんさいっ!!」
「おうっ!!」
フカサクに続いて勇ましく窓枠に足を掛ける。脇に服を抱え、今正に窓から飛び出ようとするナルに、シカマルは慌てて声を掛けた。
「ナルッ!!」
こちらに振り返ったタイミングを見計らって、自分が持っていた林檎を投げる。
「無茶すんじゃねえぞ!!」
「あり
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