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バカとテストと白銀(ぎん)の姫君
sceneW 侍女の勤め
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千早様のベッドなどを整えておりますと、「試召戦争戦術アイデア」と表紙に題されています、一連のルーズリーフの束を見つけました。
千早様の持ち物の中身を確認するなど侍女失格でございます。
ですから何が書かれてあるのかはなるべく見ないようにしていますのでどのような内容が書かれているのかは分かりません。
しかし相当の厚みをもっていましたから、何時もながら事細かく物事が分類などされているのだろうと推察します。
千早様は何事であっても一度物事を始めなさいますと、出来うる限り深くまで極めようとなさいます。
今回のこのルーズリーフもそのようなものでありましょう。
それは一重にご親族にいらっしゃいます鏑木瑞穂様という傑出した先達のせいであるのだと史は思います。
千早様がお描きになられた絵を拝見させて戴いたときの事です。
私の目から見れば身びいきも無く、素晴らしい出来だと思ったのではありますが、そんなときであっても千早様ご自身の思い通りに出来なかったようで、低い声で呪いの言葉のようにこう呟きなさったのです。
「あの人なら」と。
瑞穂様とは直接的な面識など一介の侍女たる私にはございません、しかし千早様付きの者として一度だけお顔を拝見したことがあります。
 瑞穂様の御容姿は千早様の日本人離れした容姿とは異なった目立ち方をなさっていらっしゃいます。
茶色味がかった、腰まで届くほどの長い髪をお持ちで、その顔は日本人らしく小顔で在らせられてまるで貴公子と言った言葉が一番似合いそうな容姿でいらっしゃるのですが、少しばかり心許ない表情を常に浮かべなさっているのが、瑞穂様の容姿の完全さを欠けさせている唯一の要素となっているように拝察します。
とは申しましても、それ以外の要素の全てにおいて恵まれていらっしゃいます。
家柄なのかさまざまな手習い事を器用にこなす鏑木一族ではありますが、聞くところによりますとピアノ、フェンシング、華道、柔道などを初めとして、様々な分野において見せる技量は周囲を凌駕し、全く文武に隙無くそれら修めていらっしゃる超人でいらっしゃると聞き及んでおります。
まさに天才的という他無きお方で、鏑木財閥の次期頭首の呼び名にふさわしい方だというお声も一族のうちでは上がっています。
そこに同じように万能型で年下の千早様が現れなさいますと、瑞穂様と比べられることになり「彼ならこうやった」と言った言葉や「彼は君の年でこれが出来た」と言った言葉が、いつも千早様を追い立てることになりました。
ですからあの時呟かれたのでしょう「あの人ならもっと上手く描けただろうに」

呪いのようにずしりと響く千早様の声に、史は何もお答えすることができませんでした。
そもそも御門家は鏑木財閥の一翼を担うお家であり、千早様の御父君でいらっしゃる邦秀様が妃宮侯爵家の外務官のお仕事
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