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運命の向こう側
プロローグ2
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…」
「嫌だ」
「……話を遮るのが流行っているのかの。理由を聞かせてくれんか。今更魔術師を恐れるタマでもあるまい」

 もう諦めた、という疲れを隠すことも出来ず、投げやりに問う。言われたエヴァンジェリンは苛立たしげだった。挑発的な態度に、ではない。忌々しげな視線は、どこか遠くを射貫いていた。
 現世に帰ってきた視線、それは次に近右衛門に飛ぶ。そして鼻を鳴らす姿は、彼女らしくあり、同時に彼女らしくない。

「魔術師、な。ただの魔術師であれば、強いだけであれば、面倒とは感じてもこの私が恐れるものか。いいか、私の焦点はただ一つ、奴が衛宮切嗣の後継者だという点だ」
「衛宮切嗣? 何か、どこかで聞いたことがある名前のような……」
「ふん、そうだろうな。奴はナギ・スプリングフィールドの知り合いだ」

 意外な部分でのつながり――近右衛門とタカミチの二人は目を見開き、エヴァを見た。しかし彼女は、ストレスを堪えかね、つま先で床を叩きながら無視する。
 問いかけが発生しそうな雰囲気を制し、言葉は続けられた。

「衛宮切嗣を一言で表すなら、魔術師の中の魔術師、それに尽きる。私は一度だけ、奴と戦ったことがあった。単純な戦闘能力で言えば、タカミチの方がよほどだろうが、二度と戦いたくないのは間違いなく衛宮切嗣だ。奴には勝利という意思はない、ただ目標を達成する、そのためだけに存在する機械のようなもの。衛宮士郎の通り名に、パーフェクトというものがあったな。それこそ、奴が衛宮切嗣を後継したという何よりの証明だよ。もう一度言う。私は絶対に、奴とは関わりを持たん」

 そう言えば、と刹那は記憶を掘り起こした。衛宮士郎の通りの一つに、不死者殺しというものがあった筈だ。たとえ後継者云々が無かったとしても、近寄りたくない相手だろう。なにせ『自分を殺す能力』がとても高いのだから。
 近右衛門は、視線をエヴァンジェリンに飛ばしたまま、僅かに逡巡した。両者の視線が交わり続ける。やがて先に根を上げたのは、近右衛門の方だった。ため息を一つ落とし、身を深く椅子に沈ませる。

「刹那君に刀子君、済まんが君らの負担が増えるかもしれぬ。その分の便宜は図ろう、よろしく頼むぞ」

 言いながらすがるような目で見られては、否とは言えなかった。戸惑いながらも、曖昧に首を縦に振る。

「それでじゃ、君らには先に行っておくがの。実はもう向こう側との取り決めはほぼ決まっておる」
「そうなのですか? なら、なぜ先ほど発表しなかったんです?」
「どんな内容じゃろうと、騒ぎになるのは決まっているようなもんじゃ。少し間を置いて、落ち着いてから正式に通達する。それで、肝心の内容じゃが……結論から言えば、衛宮士郎を中等部に近づける事だけはなんとか避けられた」

 同時に、ぐっと握られる拳―
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