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運命の向こう側
プロローグ2
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の問いに、近右衛門は大きく頭を振った。

「今までの魔術師なら、牽制の意味も込めてそれでも良かったのだがの。今回はそれだと命取りになりかねん。衛宮士郎には、可能な限り魔法使いを近寄らせぬようにするつもりじゃ。負担が大きいと思うが、よろしく頼むぞ」

 真剣な近右衛門の言葉に、しかし曖昧に頷くしか無かった。それは、刀子も同様である。
 彼女たちは、二人共に神鳴流であり、つまり魔術協会に友好的な組織の出身だ。魔法使いの危惧する魔術師の驚異とうものを、いまいち理解できない。

「そして、真名君にはその補助を……」
「断ります」

 言葉を遮り、断固とした返答。思わずたじろぐ近右衛門に、しかし真名は小揺るぎもしない。

「理由を聞いてもいいかのう?」
「私は刹那達と違って、友好組織の出身ではありません。そして、魔術師の驚異をよく知っています。彼らは躊躇がなく、そして徹底的だ」

 つまり、あの龍宮真名が魔術師を恐れている。常に飄々とし、最強の魔法使い、エヴァンジェリンにすら弱みを見せない彼女がだ。

「なにより、彼らにとって魔術は一種の信仰。魔道使いのように道具にせず、生きる意味としている。故に、彼らは魔術で勝負しようとは絶対にしない。それはあくまで最後の手段です。可能な限り魔術以外の部分で叩き潰される……それは麻帆良の学園長である貴方が一番よく知っているはずです。魔術師は、ただの戦闘集団とは訳が違う。あらゆる面に精通した、異常なプロフェッショナルなのです。この世で最も敵に回してはいけない個人であり、集団だ」
「う……むぅ」

 真名が言い切り、そして室内に沈黙が発生する。近右衛門と高畑、両者共に苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。
 魔道使い、という単語は、刹那も聞いたことがある。魔術師が魔法使いを侮蔑していう言葉だ。魔術師にとって魔法とは偉大なものであるらしく、同時に到達すべきもの。それを自称する魔法使いは、魔術師らにとって許しがたいのだとか。
 彼女は今魔法使いを魔道使いと言った。それはつまり、魔法使いよりも魔術師に配慮する、という意思表示に他ならない。

「危険や驚異を感じたら、すぐに契約解除してくれて構わん。報酬は言い値で払い、違約金も求めぬと誓おう。それでなんとか、受けてはくれんかの?」
「……あとで書類にまとめていただきます」

 破格、としか言いようが無い契約内容。しかし、それですら躊躇させるほどなのだろう。
 刹那は、自分の中の魔術師像が変わっていくのを自覚した。明確に、どうなったという訳ではない。ただ、曖昧に形が崩れていき、不吉に肥大化していく。そんな風に。
 最低限でも、契約はできた。その事実に安堵のため息を漏らし、次に視線を飛ばしたのはエヴァンジェリン。

「それで、エヴァには…
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