プロローグ2
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、ワシらに拒否権はない。そも、拒否などできるなら、最初から監察官を受け入れておらん」
「しかし、この麻帆良は我々の土地です!」
「馬鹿者が!」
呆れたような叱責に、声を上げた男が縮こまった。会場を一瞬で黙らせた威がただの一人に向いたのだ、それも仕方が無いだろう。少なくとも、刹那は対象が自分で無くてよかったと思える程度には。
魔術師と魔法使いの仲が壊滅的というのは、裏の世界の常識である。しかし、それとは別に、麻帆良と魔術師の関係も、前者とは別枠で壊滅的なのだ。
日本には、龍脈が山のようにある。龍脈の山の上に日本ができた、と言ってもいい程だ。ただし、そこから使える龍脈を探すとなると、数えるほどしかなくなる。日本にある霊地のほぼ全てが、乱れて予期せぬ動きを見せるのだ。例えば、富士山であったり、恐山であったり、京都であったり。そういった場所は悪魔や化生が生まれやすく、また吸血鬼のような化け物も馴染みやすい。
関西呪術協会のような日本の組織は、乱れた霊地を処理するのだけで手一杯だ。乱れた霊地の処理はお手の物だが、整地を管理するノウハウに乏しいのも理由の一つ。ならば、整った霊地を管理するのは、外部の組織に任せるしかない。委託先は、関係の良好である魔術協会だったのだが……結局、それが達成される事はなかった。
それが、表の戦争を指すのか、それとも裏の戦争を指すのか刹那は知らない。戦争のどさくさで魔法使いが麻帆良を勝ち取った、それだけを知っていた。そんなものは、ただの横入りだ。それを誰もが承知している――魔法使い以外の、誰もが承知している。
かすめ取った事自体は、特別悪いことではない。当然、恨みは買うだろうが。問題は、魔法使いの一部が正しさを信奉するあまり、他の要素を忘れがちだという事だろう。
「ワシら魔法使いは、麻帆良の管理を任されているだけであり、ここが魔法使いのものになった訳では無い! 監察魔術師の受け入れは日本からの要請でもある。麻帆良の管理者である事に驕って拒否すれば、ワシらの権限は大きく削られるじゃろう」
麻帆良を追い出されかねないくらいに――言外に、そう語っている。
魔法使いが麻帆良を勝ち取るのに、力は十分だった。しかし、麻帆良を維持するには、脇が甘すぎた。
神秘は、政治と強く関わっている。まあ、昔は神秘こそが唯一の信仰であり権威だったので、当たり前の話だが。つまり、世界中にある神秘的組織は、全て政治に強く影響力を残しているのだ。聖堂教会に次ぐ大組織、魔術協会が、政治的影響力を欠くなどあり得ない。
これには、立地の問題もある。魔法使いは魔法世界という独自の世界に、同種だけの国を作っている。対して魔術師も、時計塔だけは半異界に設置していた。しかし、基盤はあくまで現代社会なのだ。影響力の保持に対して、意識がま
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ