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小さな勇気
第七章
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「軽い気持ちでやらねえと」
 それが彼等の信条であった。恋は軽く、そして焦る。恋は焦らずだの何処までも熱く濃く、といったものは見事なまでにない。こうしたところも本当に今時だった。
「真剣にアタックして砕けたらどうよ」
「ダメージでかいだろうが」
「でかいのか」
「御前もこの前桜商の先輩にあっさり振られたじゃねえか」
「まあな」
 それを出されると弱かった。頷くしかなかった。
「あれ、結構痛かっただろ?軽くてもそれだぜ」
「マジにやったらどうよ。こけたら怪我じゃ済まないかもな」
「それで立ち直れなくなったらあれだろ。だから俺達はそんなのはしねえんだよ」
「そうだったよな」
 実は康則も最近までそうした考えであった。しかし先生の酔った姿を見てどういうわけか考えが変わってきているのである。ほんの少しずつであるが。変わってきているのは事実であった。
「だからコクるなんてことはしねえさ」
「俺も」
「俺もな」
 彼等は口々に言った。
「何かあったら痛いからな」
「そうだよな、痛いよな」
 康則もそれに頷いた。
「だよな」
「けど御前がそれやるのなら俺達は別に止めないぜ」
 彼等はこうも言った。
「止めないのか」
「だってよ、御前自身の問題だからよ」
「合コンにも自由参加だしな」
「好きなのを選べよ」
 それが彼等の言葉だった。
「好きなのか」
「ああ、御前のな」
「どっちでもな。サイコロか何か振ってよ」
「決めればいいじゃねえ?俺達止めないから」
「そうするかな」
 ぼんやりとした言葉だがそれに応えた。
「好きにしな」
 それが仲間の返事だった。とりあえず暫くは考えることにした。先生を見ると日に日に大人しくなっていく。服装も外見も変わらず見事なプロポーションがはっきりとわかる。そんな先生を見ているとやはり美人だと思う。これまでは性格があれだったのでとても考えることは出来なかったが今は。康則自身も少しずつ変わってきていたのだ。
「先生、かあ」
 帰り道、暗くなってきた街の中でぽつりと呟いた。
「それがなあ」
 まず相手が先生である。何かを言うにしろそれが大問題だ。しかし。
「けど。転勤するんだよな」
 学校が違えば。微妙になる。それも頭に浮かんできた。
「若しかするとな」
 何かが出来るかも知れないと思った。今は思っただけだが。それでも思いはじめて、それが動きはじめた。ゆっくりと。それはすぐに康則の心を動かしたのであった。
「ねえ先生」
 女の子達が真子先生に声をかけているのを廊下で偶然聞いた。自然に耳がそちらに行く。
「先生って鷹田高校出身ですよね」
「ええ、そうだけど」
 答えるその声も穏やかなものになっている。小心にすら聞こえる程だ。やはり先生も少しずつ変わってき
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