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青い春を生きる君たちへ
第3話 平手打ち
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なんていう奴は、そうそう居ない。


「……で、何の話なんだ?」


小倉が直斗に尋ねると、直斗は今にも噛み付いてきそうな顔で怒鳴った。


「とぼけんな!昼休にお前が俺の雅子をコケにしやがったってのはバレてんだぞ!」
「ああ、あのケバい女はお前の彼女だったって訳ね。で、お前は彼女がピーピー泣いて仕返しをねだるから、リクエストにお応えして俺の所にやってきたって訳だ。あのさ、俺まだ転校してきて日が浅いのよ。だからあの女がお前と付き合ってるって事も知らねえんだし、もっと事情を一から十までキチンと説明してくれる?ま、今回はたまたま俺の頭が賢いおかげで状況飲み込めたけどさ。あと、昼休みをヒルキューって言うの、この学校では流行ってんの?それともお前がそう言ってるだけ?日本語はちゃんと使ってくれよ、なんなら俺がネイティブチェックでもしてやろうか?」


ペラペラ涼しい顔で煽り立てる小倉に、直斗の顔は真っ赤になっていく。怒りのオーラは少し離れていても伝わってくるレベルにまで達していたが、小倉はまったく怖気付く事もなかったし、なんなら口笛でも吹き始めそうな、そんなテンションであった。


「……おいおい、話があるって言うから来たんだからさ、何か続きを言ってくれよ。それとも何?ただ事実確認しに来ただけ?それでお前のお姫様は納得すんの?派手な見た目の割にゃ随分と大人しいんだな?」
「うるせえっ!男の癖にペラペラ喋りやがって……」


直斗はじりじりと小倉との距離を詰めてきた。やっとやる気になったのか、結構時間かかったな。この場に及んでも、小倉が抱いた感想はこの程度のものだった。


「……雅子をバカにする奴は絶対俺が許さねえ……コロしてやる……」
「ん?殺す?お前が俺を?どうやって?」


小倉のこの軽口によって、火蓋が切られた。直斗の大きく振りかぶられた拳が、小倉へと向かう。小倉はその拳が自分に達するより早く、直斗の足下を強く蹴った。大きな動きをしようとした体の土台を崩されて、直斗は無様にその場に前のめりに転んだ。


(なんだよ……田中が止めに入った時にちょっと安心したような顔しやがったから、もしやと思ったが……こいつ全然、こういうのに慣れてねえじゃん……)


呆れ顔の小倉は、地面に倒れた直斗の背中に腰を下ろした。小倉の下敷きにされた直斗からくぐもった声が漏れる。身動きできなくなってしまったが、直斗は殊更に抵抗する気もないようだった。「コロしてやる」などと啖呵を切った割に、10秒とその勢いが持続しなかった。小倉はため息をついた。


(やっぱ、こいつも偽物だ……強い振りをして、格好だけで人を騙しているうちに、自分自身もその格好に騙されちまったんだろうな……)


うつぶせになって、自分の上に遠慮
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