明け方の少女の心に
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切っているのが華琳様。誰彼の別無く貫き通すからあなた達の二律背反は偽善で偽悪。辿り着けないとしてもあなた達のようになりたい、です。
二人の作る世界は暖かくて、殺してしまう人達には冷たくて、どちらも責任を忘れない。
人として既に壊れている秋斗は自分の命を対価として投げ捨てるようになる……朔夜は行く先を読み取れた。
人の枠から外れかけている華琳は自身の平穏を、人生の全てを世の為に捧げる……朔夜は辿る先を想像できる。
名前も知らない誰かの事など放っておけばいいのに、そう言えてしまう朔夜は、二人のようになれないとも分かっていた。
自分の望みは箱庭の平穏で、其処に居て欲しい人が世の平穏を望むから、それを共有出来るだけなのだ。
――追いかけてみて、いいですか?
少しだけ、他人の痛みを知ってみようと、小さな軍師は決意を固めて、醜悪な戦場に目を向けた。
ただ、彼女は軍師。主と王の為に何かする事も忘れない。
「お二人に、言っておきます。この戦場……次の一手に繋がる連環の計略、です」
冷たさを宿しながらも目を逸らさない彼女を見て、満足した表情で華琳は頬を吊り上げる。
兄とまで慕ってくれる少女の変化を感じながら、目を細めた彼は小さく鼻を鳴らした。
あなたが言うべき、と無言で示すのは華琳で、答え合わせはしてくれなさそうだとため息を付くのは秋斗であった。
「官渡に張られている残りの罠を確かめる意図を含めて、わざと紅揚羽を捕えさせる為の戦場……ってとこか。主だった罠も兵器も壊れたから、曹操殿がどう動こうとも次に行われる官渡の第三戦闘で全てが終わる。袁家の頭の中では、な」
「どちらにしろ桂花……荀ケが此処に着いてからにしましょうか。あの子こそ、この戦の最後を飾るに相応しいのだから」
秋斗は敵の計を話し、華琳は味方の計を話す。
これで先は繋がった、と……朔夜は彼が無茶をしなくていい事にほっと安堵を落とし、戦場にだけ意識を落としていく。
秋斗も華琳も、城壁の上で二人の女の戦いを眺めていた。
大剣と大鎌が舞う、戦場には似つかわしくない舞台を。
†
夏候惇を相手取るには両手でもやっとだっていうのに、さすがに無茶をしてると思う。
一歩間違えば死ぬ。それほど敵の剣戟は鋭く速い。
見据えてくる瞳には憎しみの欠片も無く、侮蔑と嫌悪の感情が色濃く浮かんでいた。
「ねぇ夏候惇、あたしのこと嫌い?」
避けるくらいは出来るから、他の兵士達の生存率を上げる為に時間を引き延ばしに掛かっている中で問いを投げる。
中々当たらないから苛立っているらしく、舌打ちと共に彼女はぴたりと止まった。
「ああ、大嫌いだ。お前みたいなやつ」
苛立たしげに歯を見せて、
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