明け方の少女の心に
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ながらに見ているようだけれど……現場に立って思い返すと全く違うモノになるわよ」
華琳が秋斗の現在の状態を読み取れないわけが無い。ぴたりと言い当てられて、彼は大きなため息を吐いた。
「……りょーかい」
「朔夜、あなたもよ」
「ふぇ……ぅあっ」
いきなり話を振られて困惑する朔夜に、華琳は彼のようにでこぴんを一つ落とした。
「戦争と日常を割り切っているのは分かる。しかし……あの死んでいく兵が、店長や給仕たちだったら……あなたはどう思うのかしら?」
「……」
首を傾げる朔夜には、想像して見るも答えは出ない。
いつでも世界を斜めに見ている彼女では仕方ない事ではあった。
「幾多の男共に蹂躙される娘娘の給仕。力任せに抑え付けられて服を破られ……身体の隅々まで犯される。慈悲も無く、泣き叫んでも、助けなど来ない」
続けて声を出した華琳は、彼女の想像力を間違わずに波紋を齎していく。
不快気に顔を歪めた朔夜は、華琳を睨みつけた。さもありなん。妄想が大好きな少女は、胸糞悪い状況を想像させられれば苛立つに決まっている。
秋斗が意図に気付き、朔夜を抱き上げて城壁の端で戦場に目を向けさせた。
気にせず、華琳は同じように並んで、言葉を続けて行った。
「店長が刃に掛かった。見て見なさい。あの男、背丈が店長と同じくらいじゃないかしら?」
「……っ」
目を背けようとしても、彼の抱きしめ方ではそれも出来なかった。精々が目を瞑ってやり過ごそうとするくらいである。
しかし……もう鮮血を見てしまった。引き裂かれる肉、漏れ出る臓物、頸が飛ぶ所も見てしまった。
妄想力豊な彼女には、脳髄に溢れる映像を掻き消せない。
「あら、あっちでは徐晃と同じくらいの背格好の男が死んだわね。切りつけられて絶命したのに、戦場の狂気に堕ちた兵が何度も何度も身体を切りつけて……ふふ、原型が分からなくなってる」
「や……やめて……」
か細い声が口から洩れた。みるみる内に、朔夜の顔は色を失っていく。
秋斗は……命の灯が消えていく戦場から目を離すことなく、雄叫びや断末魔の全てを受け止めて、嘗ての自分が何を感じていたのかと、眉を顰めていた。
「止めてなんかあげない。あそこでは臓腑が抜け落ちているモノがいるけれど、腸を引き摺りながら這ってる兵なんて――」
「やめて、やめてっ!」
フルフルと首を振り、なんとか彼の腕から抜け出ようとするも、力の無い朔夜では出来ない。
醜悪さを日常に置き換えられると、経験の浅すぎる朔夜では耐えきれなかった。
甘えるように、彼の腕をぎゅうと握った。彼も何も言わず、朔夜を抱き上げなおして、抱きついて来た彼女の背中をぽんぽんと叩いてあやす。
「……っ……ぅ……」
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