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乱世の確率事象改変
明け方の少女の心に
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るい続ける。



「さて……あなたの作った蜘蛛の巣の効果を見せて貰いましょうか」

 楽しげな声が耳によく響く。華琳の笑みから分かるのは、信頼。
 彼の隣でむすっと口を尖らせる朔夜がジト目で睨むも、華琳の表情は毛筋ほども揺らがない。
 到着してからというもの軍議続きではあったが、彼と華琳が仲好さげに話している様はとある二人の心を掻き乱して居た。
 一人が春蘭。
 愛しい主が、まるで旧来の友と語り合うかのような空気を醸し出していれば、心穏やかでいられるわけがない。その度に秋斗に突っかかっては、秋蘭に窘められていたのは言うまでも無い。
 もう一人が朔夜。
 たった一人の大切である彼が、覇王に認められているのは当然と思っていたが……華琳が秋斗を苛め続けるのだから不満も溜まる。それを苦とも思わず楽しげな彼であるから、何も言えないのだが。

「ははっ……まあ、見とけ」

 返す声は楽しげで、これから人を殺すとは思えぬ悪戯好きな子供の笑み。まだ彼は、黒麒麟のようにその行いの罪深さを実感していない。
 華琳は見抜いていても、何も言わない。その時が来なければ何も出来ないのだから。
 大きく息を吸った彼は……たっぷりと間を置いて、口に咥えた笛を高らかに鳴らした。
 一度、二度、三度、四度……鳴らせば即座に、城壁の下からも同じように音が鳴る。鳴らしているのは……真桜であった。

「どっちかってーと蟻の巣なんだけどな」

 言葉が聴こえるか否かという時分を持って、戦場が変化を遂げる。
 ボコリ……と大地が穿たれた。誰も何もしていないというのに、遠くから順繰りに、大地が陥没していく。
 立ててあった杭の回りから一つずつ。突撃を仕掛けていた兵士が急な落下に戸惑いながら穴に落ちた。
 一つ、一つ、また一つ。戦場が穴ぼこだらけになって行く。足場を失った兵士が次々に落ちて行く。絶叫を上げる間もなく、人が五人程並べる直径の穴に落ちて行く。
 杭は走るのには邪魔であろう。当然、その上に人が群がる事は少ない。障害物を避けて通るのが生物の性。彼と真桜は、官渡の城壁外を“地面の中から”崩していたのだ。普通に掘れば大地の色の違いでバレるから、と。
 掘り抜いて出た土は竹槍に詰めるなり、袋に詰めて攻城戦の対策に使うなり……使いようは多々あった。官渡の内部に迷路のような順路を作る事すら出来るのだ。
 真桜の螺旋槍があってこそ出来る策である。大まかに掘り進めば、後は兵士が整えるだけなのだから。

「うっそ!? なにあれぇ!?」

 城壁の外では、明が驚愕から声を張り上げていた。余りに予想外。こんな罠を用意しているなど、予想出来るはずが無い。
 穴だらけでは隊列はもはや体を為さない。突撃に戸惑いが生まれれば、多くの兵士が矢や小型投石器の餌食
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