明け方の少女の心に
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しいと願い、彼女の大切を奪い去ってでも手に入れたかった平穏は、まだ可能性を捨てずともよい。どれだけ、絶望的な状況であろうとも。
ずずっと鼻を啜った。グイと袖で目元を拭った。自分がするべき事が何か、桂花は間違わなかった。
「あんたは分かってないわ、夕。華琳様はね、明如きじゃ騙せないし……黒麒麟と同じで追い詰められるだけよ」
自身の不甲斐無さに、またぎゅうと拳を握る。
如何に覇王たらんと世に示すとは言っても、華琳がそれだけで終わるわけが無い。主に向ける信頼から、桂花は最悪の事態……一番起こり得る事態を見極めていた。
――明を追い詰めるのは私と華琳様で、夕を助け出すのは……
自分では無いから、それが悔しくて哀しくて……桂花は唇を噛みしめた。
遠い昔、三人で笑い合っていたあの頃を思い出しながら。
†
前の戦闘と同じく、官渡の砦にはバリスタによる攻撃が行われた。
三つの門を焼き、焼き切った頃合いを見計らって袁紹軍の兵士が殺到する。その数、総勢三万。
慌ただしく蠢くその戦場で、前とは違う点があった。
バリスタの数が倍であったのだ。小型投石器対策だと容易に想像がつくそれは、官渡の城壁の上に並ぶ曹操軍の兵器を半数まで減らした所で全て壊された。
被害が抑えられた事によって、攻城戦は幾分かマシになったと言える。
「とっつげきぃー!」
楽しげに、心の底から歓喜を浮かべて、紅揚羽が声を上げる。
恐れ慄く東西の二面と違い、北門だけは彼女が天塩に掛けて育てて来た精兵達であるが故、士気は間違いなく高かった。
バツン……と異質な音が鳴り、門の内側から槍が飛ぶ。幾多の竹槍が真っ直ぐに飛ぶ様は、通常の兵ならば恐怖を覚えずにはいられない。
しかし相対するは大きな鉄の盾を持って二人で防ぐ張コウ隊。怪我もせず、被害を一人も出さずに、徐々に、徐々に城門へと歩みを進めて行く。
矢の雨が降り注ぐも、木盾を以って固まればすれば防げるモノであり、被害はそう多くない。左右から機を見て踊りだす兵士達も、上からの矢を抜けきったモノから殺到していった。
そして……紅揚羽はただ一人先頭を切って……鎖大鎌を振り抜いて兵器の破壊に成功する。
「よっしゃー! 群がれバカ共! このまま入り込めっ!」
面攻撃さえなければ被害は減る。口を歪めた張コウ隊が城壁外から続々と突撃を始めた。
明は城門の外で、器用に矢を弾き飛ばしながら指示を出すのみ。自分が捕えられる可能性を最大限に警戒していた。
少しでも敵の数を減らす事が最善。例え自分が此処で捕えられるつもりだとしても、である。
その城壁の上で、黒が一人……華琳の隣で口を引き裂いているとも知らずに……彼女は悠々と兵とは逸脱した暴力を振
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