明け方の少女の心に
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――人の命の輝きを喰らって、生誕に繋がる行為の真似事に溺れて、
にやりと笑った表情が板についていた。自分も同じように口を裂いたが……いつもと違う気がした。
――そして夕に自分を映す事で、生きていると感じたかっただけ。
牽かれる鎖。武器を手放さずに、あたしの方から近付いていく。
――あたしを映してくれるようなあの人ともっと早く出会っていたなら、
大剣がよく見えた。振られる事は無いだろう。ほら、彼女は手放した。一応、鎌を振ろうと試みるも、さらに強く鎖を牽かれた事で重心を崩した。
――あたしは自分に戻れたかな?
鈍痛が腹に走り、呼吸も侭ならなくなった。
途切れかけの意識の中、目に移ったのは不敵な笑みと、哀愁の眼差し。
同情なんかいらないよ。あたしはもう、夕の為にしか戦えない。
お前らみたいに、自分を持っていないんだから。
秋兄みたいに、誰かの為の願いしか、自分の器には入らないんだから。
「敵将張コウ、この夏候元譲が捕えた! 戦闘を即時止めればこやつと貴様らの命は保障しよう! 武器を置き、無駄に命を散らすな!」
最後に耳に入った言葉に、あたしは笑みを深めて眠りについた。
起きたらまた、夕の為に戦おう。この命この心、全てを賭けて。
回顧録〜ドウコクヲアゲタアトニ〜
「あなたが、天の御使いとかいう詐欺師ですか」
「華琳様……例えどれだけの、才があろうと迎え入れる利が少なすぎます」
「コレは此処で、殺しておくべき、です。袁家が滅びた今、約束した袁家による平穏を作れなかった天の御使いには、なんら価値が無く、怨嗟の指標にしかなり得ません」
「何より……袁家を内部策略で滅ぼしたのは……コレです」
どうして、お前が官途に居る……司馬仲達
そうか、自分を殺すために出てきた本当の敵は、お前か。
大切な彼女が敵の横、冷たい瞳で自分を見ていた。
蔑む視線。侮蔑の眼差し。裏切り者に向ける、悪意の感情。
嗚呼、この世界に救いは無い。
この世界には、絶望しか無い。
だって、彼女すら、自分の敵になってしまった。
それでも生きて欲しい。
どうか、この救われない乱世で生き延びて欲しい。
これが自分に出来る最善。
もう一度は、耐えられそうにない。
気付けば自然と、自分の口が引き裂かれていた。
これで救われないのなら
こんな残酷で醜悪な世界……
彼女を救えない世界なんか
価値は無い。
ただ、最期に呪いと願いを残そう。
壊れてしまった自分は、きっと繰り返し続けても――――
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