明け方の少女の心に
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らが全力。楽しい楽しいコロシアイの始まり。
身を震わせる感情は、自分の心の内をまざまざと見せつける。
どうやら……あたしはこういう真っ直ぐな輩が大好きで、自分に足りないモノを持ってるから羨ましいらしい。
「あはっ……いいね。大好きだよ、そういうの」
舌を出した。足りないモノを食べたくて。
腰が揺れる。甘い痺れを満たしたくて。
胸が締め付けられた。手に入らないと知っているから。
「お前はわけが分からん……まあいい。私は嫌いだが華琳様が欲しいと言った」
「張遼みたいに?」
「そうだ」
「だからあんたが叩き伏せて跪かせるって?」
「そうだ」
相変わらずの忠犬っぷり。
あたしと何が違う? こいつは曹操の為に、あたしは夕の為に。
夏侯淵は効率の面でも内面的な要素でもあたしと似ていたけど、こいつは全く違うと思う。
「ね……あんたとあたしって何処が違うのかな?」
尋ねてみた。分からないのがもどかしくて。同じになれるはずなんか無いのに。
「はぁ? 何処って……お前はお前で、私は私だろう? 何もかもが違うじゃないか」
返答は単純明快で、子供のような答えだった。
ああそうかと納得が行く。あたしは……
「……そだね。つまんない質問ごめんね。そろそろ戦おっか」
ふっと笑みを零して、大鎌を構えて突きつける。もう何も、考えたくなかった。
「うむ。もはや言葉は不要だ。己が武器で、語り合うのみ」
大剣を構える彼女を、やはり羨望の眼差しで見つめている自分が居た。
そうだ。そうなのだ。あたしはあんた達が羨ましくて仕方ない。綺麗で、純粋で、曲がって無くて……この世界に愛されている。
大上段からの一振りは鋭く速く、身体を横にして躱すのもギリギリ。
――誰かに似てると、安心する。
小さく切り上げると、追加の攻撃を警戒してかそのまま直進して懐に入り込んできた。
――誰かと違うと、安息が来る。
横薙ぎの一閃を返しの刃で受け止めれば、高い金属音がやけに耳に響く。
――誰かが居ないと、カタチを保てない。
弾けた武器は、力が強い彼女の方が立て直すのが速く、そのまま、自分は反動を利用して距離をとった。
――自分の起源を殺してしまったあの時から、
追撃の二歩。彼女の踏込みは力強い。横か、縦か、袈裟か……めんどくさくて自分から仕掛けた。
――あたしは“自分”を失った。
鎖を用いての変則攻撃。驚くことに、彼女は鎖を掴みとった。その手に巻きつくのも意に留めず。
――心身に残っていたのは他者の生への渇望と生物の起源への堕落。
ぐ……と踏みしめた脚は力強くて、思いっ切り引いても彼女が動くことは無かった。
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