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舞台は急転
第六章
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「じゃあ復習した方がいいかしら、やっぱり」
「私も」
「そうよね。やっぱり何でもそうよね」
 ここで密かに背中を後ろにやる。そうして背中だけでなく頭の後ろも範人に手に付けるのであった。範人の温もりをその頭の後ろからも感じた。
「復習しないと駄目よね」
「予習もね」
「その点有美は凄いわ」
「そうかしら」
 範人がこちらを見ているのにもあえて気付かないふりをして話を続ける。
「予習までちゃんとしてね」
「そりゃ成績もいい筈よ」
「私は別に」
 この謙遜も本物である。
「そんなことはないし。まあ普通に」
「普通のことを普通にって言うじゃない」
「そう、やっぱりそれよね」
 有美に言う彼女達も時折範人をチェックする。そのうえで有美に目配せをする。だがそれはあくまで慎重であり範人には気付かせないのであった。
「それをやってるから凄いのよ」
「私達そんなのしないし」
「そうなの」
「そうそう、日々の積み重ねってやつ?」
「やっぱりそれよね」
 また皆で有美に言う。
「それできてるからよ」
「私もしようかしら。面倒臭いけれど」
「何なら今日の放課後ね」
 これは有美の次の策略への伏線だった。ちらりと右斜め上を見て範人を見る。一瞬であっても。
「図書室に行く?」
「図書室に?」
「そう、図書室」
 こう皆に提案するのだった。
「どうかしら。そこで皆で数学勉強しない?」
「ええ、そうね」
「それ、いいわね」
「賛成」
 皆もここで一瞬だけ目だけ上に向けて範人を探る。それを終えてからまた有美に目配せをしてそのうえでそれぞれの言葉を述べるのであった。
「それじゃあ今日の放課後ね」
「図書室で皆でね」
「ええ、それじゃあそういうことでね」
「わかったわ」
「皆でね」
「そう、皆でね」
 有美はまた範人をちらりと見る。見ればずっと彼女の方を見ている。それを確認して彼には見えないようにしてほくそ笑む。そのうえでまた皆に告げた。
「行きましょう」
 こんな話をした。そして駅に着いて電車から出る時そっと身体を左に動かす。その時に身体の前を範人に向けるとそこで前に出ようとする彼の左腕に胸が触れた。その感触も感じてさらに微笑を浮べるのであった。
 範人はそれにぎょっとなったようだったが今は電車を出る方が先だった。その後ろには妹の紗枝がいる。彼女も有美と擦れ違ったがここで二人は彼の後ろで顔を見合わせた。そうして互いに微笑み合うのであった。
「これで第四段階は終了ね」
「予想以上だったわ」
 電車から出て上に昇る階段の前で話す有美達だった。階段の上には多くの生徒達に混ざって範人と有美もいる。二人で並んで階段を昇っている。
「はっきり言ってね」
「予想以上って?」
「図書室のあれ?」
「それ
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