賭け
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単純感情から生まれたエレメリアン、目の前の敵・サーストは確かにグラトニーの問いへそう答えた。
声質は少し低い青年のソレで、単語を三回繰り返すという奇妙な口癖を持っている事が窺えるが、肝心の姿はまだ見えない。
だが僅かだが運が味方したか、強風が吹き煙が舞い上がり、男の姿が視認出来るるようになった。
(……自分に、似てる)
グラトニーの思った通り、彼女とサーストには似ている所があった。とはいっても、左腕が似ているとか、纏っている服が似ている訳ではない。
似ているのは“人間的な部分と化け物的な部分を併せ持っている”所なのだ。
特に異様なのは右腕と顔の下半分であり、右腕は肘から下がジェット機のタービンを簡略化して、先端から刃先が二股に分かれている僅かに深緑に光る刃物を生やし、他の色は右腕全てグラトニーとは違う掠れた緑色、呼び名の分からぬ色に染まっている。
顔には牙の意匠を携えた主な配色は黒と白のガスマスクが付いており、パイプの様な部分が顔に突き刺さっていることから、それも身体の一部である事が窺える。
若干長い髪は逆立たせて後ろへ流してあり、色は先近くが灰色がかった緑―――菊塵色に近いメッシュが掛かっており、他は年老いた老人の様な白髪に近い色で、何処を原色に戻しても余り鮮やかになるとは言えない。
そして服は、右腕部分が全て、他の部分もところどころ破れている拘束衣に、自己流でアレンジを加えたものであり、下にも筋肉の線が浮いている黒い無地の服が見えている。体に直接密着しているとはいえ、浮き出ているほどなのだ。
「……自分」
「ん?」
「自分、グラトニー」
グラトニーは、サーストが名乗ったからか自分も名乗った。相手方からの名乗りを受けたから答える様な、ノリのいい性格では無いのに受け答えをしたことから、グラトニーが食欲ばかりに構っていられなくなっているのが分かる。
『相棒、俺はあいつに聞きたい事がアル……俺の言った事をアイツへ質問してクレ』
「……ん」
ラースに言われ、グラトニーは口で音量小さく答えるのみに止める。そして、ラースは攻撃が来ないのを充分に警戒しつつ、質問を開始した。
『一つ……何をしに来タカ、ダ』
「……ここに、なにしに来たの?」
「凡愚、愚問、問答する事でも無い。食いに来たんだ、エレメリアンをな」
予想通りと言うべきか、案の定彼もグラトニーと同じ目的でここに降り立ったようだ。しかし、ならば何故エレメリアンの所へ直接向かうのではなく、態々グラトニーの前に降り立ったのか。
ソレは当然ラースも疑問に思っていたらしく、二つ目
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