第2話 購買で
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はそう見えた。そんな高田に、少しばかりの共感を覚えてはいたが、しかし、小倉はわざわざ話しかける気にもならなかった。
ぼっちが集まった所で仕方がない。ただ同じぼっちというだけで誰かと打ち解けられるような奴なら、そもそもぼっちにはならない。下手なコミュニケーションで、独りでいることの不安感を紛らわせ合うような、そんな無様を晒す事にしかならないだろう。ぼっちはしっかり一人立ち、いや独り立ちして、不安感や孤独感など全く気にしない強さを手に入れるべきなのだ。だから、例え高田紫穂にシンパシーを感じたとしても、自分と彼女の人生は触れ合わない。互いに離れた所で、しっかり立っていればそれでいい。
そんな事を考えているうちに、列は前に進んで、自分の前の高田の順番になった。
「何にする?」
「……メロンパン一つで」
小さい声、しかしその割にはっきりと聞こえる声で高田が注文した時、小倉は自分の背後から耳障りな甲高い声が響くのを聞いた。
「あーあ!メロンパン最後の1個だったのに!うっわマジサイアク!」
振り返ってみると、茶色く染まってクルクルとロールした髪をイジっている女を中心とした何人かのグループがこちら側を見ていた。どいつもこいつも、似たような制服の着崩し方をしていて、ぱっと見では見分けがつかないが、小倉は記憶を辿って、リーダー然としている女の名前は瀬尾という、同じクラスの女だったという事に思い至った。馬鹿みたいな声を出したのもこいつらしい。
「…………」
小倉と同じように、瀬尾達を振り返っていた高田は、表情をピクリとも変えなかった。どんな感情を抱いているのか、実に分かりにくい顔だったが、小倉は近くに立っていた分、その口から呆れたような息が漏れるのが聞こえた。
「……すみません」
高田が購買のオバサンの方に向き直り、注文の訂正を行おうとする。小倉は、自分の腹の中で何かが動いたのを感じた。自分の後ろの瀬尾が小さな声で「よし」と呟いていたのが聞こえると、腹の中で芽生えたその熱が一気に膨れ上がり、気がつくと、高田の華奢な肩に左手が伸びていた。
「……何?」
唐突に伸びてきた小倉の手が肩を掴む直前で高田は身を翻し、手をかわして小倉の方を振り返った。空を掴んだ左手をサッと引っ込めた小倉は、自分の方を振り返った高田と、初めて目を合わせた。モノを見るような目つきで見られると、やはりそれなりに違和感を感じる。しかし小倉には、以前に似たような目で見られた経験があり、おかげで怯む事はなかった。
「……メロンパン買えよ」
「え?」
高田の無表情が、僅かにピクリとする。小倉の後ろでは、「はァ?」と瀬尾が声を上げるのが聞こえたが、小倉は背後からの声は一切無視した。
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