第2話 購買で
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くなっていく。よくもまあ、こんなに大声ではしゃぎ続けてられるのか。疲れはしないのだろうかとある意味感心しながら、小倉は購買へと向かう。
昼休みの購買は昼食のパンを買う生徒で混み合っている。4限終了のチャイムが鳴るやいなや教室を飛び出して全力ダッシュするような浅ましい連中も居るくらいで、そういうのも小倉からしてみれば「そんなに望み通りのパンが欲しけりゃ、朝の通学途中でコンビニにでも寄れば良いんではないか」と首を傾げずには居られない。小倉としては、そもそも学校の購買なぞで買う時点で、どのパンを食べることになるかには関心がない。安いからここで買うまでだ。だから小倉はゆっくりと歩いて購買まで辿り着き、長い列の最後尾に並んだ。
(……ん)
小倉は自分の前に立つ、華奢な背中に見覚えがあることに気づいた。艶やかで黒いショートカットの髪、うなじの白さがその髪の黒さと、良いコントラストになっている。
(高田紫穂だったっけ?昼もこいつ、ぼっちなんだな)
初めて松陽にやってきた日、教室の中へ入るのを躊躇っていた自分の横をするりと抜けていった小柄で華奢な少女。その印象は小倉の中に強く残っていた。その容姿も、目を引く一つの要因ではあるが、しかし見た目だけならここまでズバ抜けたインプレッションが残りはしなかった。その目つき。モノを見るような目つきと顔に張り付いたような無表情。それが小倉の中に強く刷り込まれていた。
転校してきてからこっち、小倉に声をかけてきた生徒は居たが、小倉はそのいずれとも仲を深める事が無かった。無下にあしらったつもりもないが、上滑りした下らない会話でお茶を濁し、問われるまで何も答えず、その答えもどこか曖昧だというのなら、既に高校生活の半分を過ぎて人間関係も出来上がっている時期なのだ、特段朗らかでもない転校生にわざわざ労力をかけて絡みついてくるような偏屈な奴も居らず、おかげで小倉はじっくり1人で周囲を観察する事ができた。自分は「見て」も、「見られ」ない。小倉を見返す奴など居ない。それは、情報を得るには実に都合が良かった。
そうやって見ている限り、この高田紫穂に関しては特定の人間関係を確認できなかった。何か用事がない限り、話しかける人間も居ない。モノを見るような目つきをしている割には、それほど人への対応が素っ気ない訳では無かったが、しかし会話を長く続けよう、相手と距離を縮めようという積極的な態度は微塵もなく、それが相手にも伝わっているのか、高田に話しかけた人間はすぐ逃げるように高田から離れていった。
一言で言うなら、孤高、だろうか。同じようにぼっちな奴は他にも居る。だが、高田の態度からは他のぼっちにありがちな卑屈さは感じられなかった。確かに独りだが、独りできちんと、背筋を伸ばして立っていた。少なくとも小倉に
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